いまさら聞けない「棚卸し作業」のキホン 在庫や備品数を確認するだけが目的ではない

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「棚卸しとは、在庫を実際に数えること。正確な在庫を把握することで、はじめて正しい決算ができます。つまり、棚卸しとは決算作業のひとつなのです」と話すのは、『誰も教えてくれなかった 実地棚卸の実務Q&A』(中央経済社、共著)などの著書がある公認会計士の大野貴史氏だ。

決算作業だから、実施するのは決算日。3月決算なら3月31日、12月決算なら12月31日に実施するのが正式だ。半期末(3月決算なら9月30日)に棚卸しをする会社や、それこそ毎月棚卸しを実施する会社もある。

「本日棚卸しのため午後5時に閉店させていただきます」「棚卸しのために〇月×日は出荷停止いたします」……。スーパーやドラッグストア、あるいはネットショップなどで、こんなお知らせを見かけたことがあるだろう。早めに店を閉めたり、業務を止めたりしなければならないほど、棚卸しは時間がかかる。

となれば、決算日当日に棚卸しをすることは難しい。そこで、実際には、1週間、場合によっては1カ月くらい前倒しで実施している企業も多い。

製造業の場合は、棚卸しのためにいったん生産ラインを止めなければならない。それを避けるために工場が稼働しない休日に棚卸しを実施することもある。しかし、そうなると休日出勤が必要になり、出勤手当などの費用が発生する。大企業の工場なら1回の棚卸しで数千万単位のコストがかかることもあるそうだ。

閉店繰り上げや休日対応で棚卸しをする企業は多い

一方、コンビニのように24時間営業で、店を閉められない業種はどうしているのだろうか。

「午前中はこの棚、午後はこの棚と時間ごとに、あるいは、第1週はこの棚、第2週はこの棚と、週ごとにずらして実施する『循環棚卸』という方式をとっているケースもありますね」(大野氏)

それが可能なのは、商品にバーコードがついていて、売り上げデータ、仕入れデータが瞬時に帳簿に反映され、常にリアルタイムの情報に更新されているからだ。棚卸し作業も、商品を数えるのではなく、バーコードで商品情報を読み取らせるだけなので早いし、同時に帳簿上の在庫と実際の在庫をつきあわせることができるわけだ。

「棚卸しなんてやったことがない。それって工場の人の仕事では?」(印刷・38歳)、「うちは旅行業だから、棚卸しなんて関係ないよ」(旅行・40歳)

こんな声も聞こえるが、実際、棚卸しでは何を数えるのだろうか。

「たとえばメーカーなら原材料、仕掛品(完成途中の製品)、製品の3つが棚卸し対象の基本ですが、この他、ネジや薬品・事務用品といった消耗品も棚卸し対象になります」(大野氏)

「消耗品」が棚卸しの対象になることに違和感を持った人もいるかもしれない。

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