81. マタギが信仰する山の神は〈醜女(しこめ)〉であるとされ、彼らはより醜いオコゼを神への供物にした
82. 猟に入る前、マタギたちは水行で身を清め、猟には干物にしたオコゼを懐に忍ばせた
83. 山中に入ると彼らは「マタギ言葉」という特別な言葉を使用し、里で使う言葉が山で使われることを忌避した
84. また「口笛を吹くこと」「女性に触れること」「鉄砲を跨ぐこと」「7人で山に入ること」なども禁止とされた
85. マタギは「山刀(ナガサ)」と呼ばれる独特の形状の刃物を所持していた
86. 山刀は仕留めた獣の解体のみならず、藪を切るときの鉈代わりにも、料理の際の包丁代わりにも使用された
87. マタギたちは獲物を仕留めたときや解体するとき、猟に新メンバーを迎えたときなどに特別な儀式を行った
88. 猟の対象は換金率の高いツキノワグマやニホンカモシカだったが、昭和初期にニホンカモシカは禁猟に
89. 古来からツキノワグマの胆のうは万病に効く薬として珍重され、毛皮や骨、血液なども高値で取引された
危ぶまれているマタギ文化の継承
90. しかし近年、山村の過疎化や高齢化、生活の変化などで猟師が激減しマタギ文化の継承が危ぶまれている
91. その一方で、白神山地や秋田県阿仁地区ではマタギ文化を観光や地域おこしに活かしている
92. 西日本では古くから罠を一部に組み合わせた「しし垣」が利用された
93. しし垣とは、害獣の侵入を防ぐ目的で山と農地の間に石や土を使って築く垣で「猪垣」「鹿垣」とも表す
94. 江戸時代に九州の長崎や中国地方、近畿地方、瀬戸内の島々などで多く作られた
95. 長崎・三都半島のしし垣は高さ1.6m、幅60㎝、全長200m。また小豆島には全長120㎞に及ぶしし垣もある
96. 日本では1918年に狩猟法が改正され狩猟鳥獣や狩猟免許が制度化。29年には現在の大日本猟友会が発足した
97. 1970年代に51万人いた日本の狩猟免許保持者は現在19万人程度まで減少。各地で害獣問題が深刻化している
98. 環境省では若手猟師育成に力を入れているが、日本で狩猟をするためには「狩猟免許」と銃の所持許可が必要
99. 狩猟免許を取得するための試験は各都道府県で行われ、20歳以上の健康な日本国民であれば受験できる
100. 狩猟免許は使用可能な猟具によって4種類に分かれており、免許の期限は約3年間となっている
「毛皮と皮革の文明史」(ミネルヴァ書房)「衣食住の歴史」(学研教育出版)、環境省、大日本猟友会、NHKオンラインほか関連HP
(文:寺田 薫/モノ・マガジン2018年10月2日号より転載)
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