いま「新卒採用を諦める勇気」が必要なワケ そもそもなぜ新卒にこだわっているのか

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ですから筆者は、これだけの厳しい採用環境の時期、(求人倍率の高すぎる)新卒採用をもはや諦める覚悟をするべきではないかと考えます。そもそも、新卒採用は中途採用に比べてプロセスが長く、採用後の研修体制の整備も必要なので、かつては大企業に限られた手法ともされていました。ですから1990年代までは中小企業で新卒採用をする企業は少なかったのです。ところが、新卒採用をしたことがない企業に対して、

「新卒採用こそ、社内の将来幹部を育成する最高の手段です」

と採用関連企業が啓蒙し、中小企業でも取り組みがスタートしました。それから四半世紀以上が過ぎて新卒採用する中小企業が増えて、各社が当たり前の取り組みと考えるようになっています。

ただ、ご説明したように、もともと「当たり前」ではないのです。その認識に立ち返るほうが合理的な時期ともいえるのでないでしょうか。

新卒採用を諦めた企業の前向きな意見

筆者が取材していても、新卒採用を諦めたとの声をいくつかの企業で聞くようになりました。これまで3人の新卒採用担当者をおいて、年間で10人の採用をしていた外食チェーンでは昨年から新卒採用を中止。その分だけアルバイトからの登用や中途採用で補充。ちなみに3人の新卒担当は現場の店長に異動して活躍中とのこと。人件費と新卒採用にかけていたメディアコストで6000万以上の削減ができました。そもそも、

「新卒採用できても大半の学生は1年持たずに辞めていました」

とのこと。こうした新卒社員の早期退職は毎年のことなので、会社の幹部候補を見つける機会にも、なっていなかったようです。

外食に限らず、サービス業や製造業などからも、新卒採用を諦めたことにより、コストに加えてためていたストレスまでもが解消されてよかったと、前向きな意見をたくさん聞くことができました。

もちろん、新卒採用を未来永劫に諦めろというのではありません。たとえば、求人倍率が低い、買い手市場の時期には中小企業でも十分にいい学生が採用できる可能性があります。筆者の知る中小企業でも、リーマンショックの時期に果敢な新卒採用で優秀な学生を採用。すでに管理職として活躍しているケースがいくつもあります。そもそも、新卒採用された学生は即戦力ではなく、数年かけて育成する時間が必要。新卒を多く採用したい企業が本当に欲しい人材の一部は、中途採用の人材でもあるはずです。ならば、中途採用に採用コストと手間をかけるのが合理的ともいえます。

会社として中長期的に人材に投資できる時期に行うのが新卒採用、と認識して、採用活動に取り組むべきではないでしょうか。例年行っているから今年も行う……ではなく、採用市場と自社の状況を踏まえて、新卒採用をときには諦めることも検討してみてはどうでしょうか。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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