確かに求人倍率は過去最高の状況にまでなっています。リクルートワークス研究所の調査による2019年3月卒業予定の大卒求人倍率(大学院卒含む)は1.88倍で、倍率が7年連続上昇中。
全国の民間企業の求人総数は、前年の75.5万人から81.4万人へと5.9万人増加。対して学生の数は変わりません。当然ながら採用競争が激化します。その影響に苦しむのは中小企業。なんと300人未満企業(中小企業)では9.91倍と、前年の6.45倍から+3.46ポイントと大きく上昇し、過去最高となりました。中小企業の人事部を取材すると、会社説明会を開催しても人が集まらない。資料請求をしてくる学生を丁寧にフォローするものの、大手企業の内定が出てしまうケースが大半で努力が徒労に終わることばかりと嘆く声をたくさん耳にします。もはや、新卒採用を諦めて中途採用に専念するべき企業もあるかもしれません。
コストと手間の投資に対する成果が低い
こうした採用の激戦化に対して中小企業も手をこまねいているだけではなく、さまざまな対策を取りつつあります。その1つが通年採用の実施。春から夏にかけて年1回の採用活動をするのが日本企業における一般的な新卒採用ですが、この慣習にこだわらずに年間を通じて採用活動を行うということです。
もともとは帰国子女や留学をする学生などにも対象が広がるための施策。2019年卒の新卒採用全体に占めるこの通年採用の比率は27.8%ですが、300人未満企業の実施率は38.3%もあります。
あるいはインターン経由での内定出し。インターンシップに応募や申込みをした経験のある学生は90.7%で、平均応募社数は7.4社。もはや、学生からすれば就職活動の基本行動といえる手段になりつつあります。そこでインターシップを中小企業で活用する企業も大幅に増加しています。
こうした取り組みは、知名度がそれなりに高いベンチャーなどが果敢に取り組み、成果も出しているようです。ただ、人事部において人手と手間が相当かかります。
取材したネット系ベンチャーでは、選考プロセス管理や会社説明会の運営を外部委託し始めました。学生に対する口説き(入社を勧める)やフォローを社員が行う体制で、50人の採用を目指すことに。
社内の人事部員も20人を配属。人件費を含めれば数億単位の一大プロジェクトです。こうした必死の取り組みにより、予定していた採用数を確保することができたとのこと。それ自体はすばらしいことですが、ここまでのことが中小企業でできるか?といえば、相当に難しいものがあります。新卒採用は中途採用に比べて、コストと手間の投資に対する成果が低すぎるのではないでしょうか。
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