さくらさん死因「乳がん」の診断が難しい根因 乳がんにはさまざまなタイプがある

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乳がんは、さまざまながんの中で最も病理診断が難しいがんと言われている。最終的には病理検査でがんが確定するわけだが、乳がんの病理診断を苦手であると思う病理医も少なくない。病理医は、基本的に全身の病気の診断をすることができるが、乳がんの診断を得意とする病理医もいれば、苦手な病理医もいる。

ただ、近年は、乳がんの患者さんが増加の一途をたどっていることから、乳がんを診断する機会がどんどん増えている。病理医もたくさんの病理診断を経験することによって診断能力を伸ばしてきているということも事実である。

そして、日本病理学会では、難しい症例を相談できるコンサルテーションサービスというものを行っている。病理医不足のため、病院に1人しか病理医がいないことも少なくない。そうなると難しい症例に遭遇した際に、相談できる人がいないと診断に困る。そんなときに、学会がその窓口となり、その疾患の診断のスペシャリストである病理医に診断の相談をすることができるのである。

JR東京駅の商業施設に入る「トーキョーちびまる子ちゃんストア」には訃報から一夜明けた28日午前、多くのファンが買い物に訪れていた(写真:共同通信)

なぜ乳がんの病理診断は難しいのか。

1つに、乳がんが非常に多様である、ということが挙げられる。ほかの臓器のがんでは、比較的どの人のがんも似たような形態をとることが多いのだが、乳がんはひとりひとり非常に多彩な特徴を持っている。乳がんには実に様々なタイプがあり、広がり方も硬さもそれによって大きく異なる。

また、増殖スピードも患者さんによってだいぶ違う。非常におとなしい乳がんもあれば、数カ月で著しく成長するような悪性度の高いたちの悪い乳がんもある。

そして、もう1つの特徴は、乳がんと形が似ている良性の疾患が数多くあることである。代表例が乳腺症(にゅうせんしょう)。ホルモン状態によって乳房組織の中で成長が激しい部分とそうでない部分が斑状に生じて、ごつごつと乳房にしこりがある状態をいう。

時に痛みが出ることもある。画像診断においてもしこりがあるように見えて乳がんと区別がつきにくいこと、さらに顕微鏡で観察しても、形態が乳がんと非常に似ていることもあり、これが病理診断を難しくしている。

男性も乳がんにかかる

ここまで乳がんはまるで女性特有の病気のように述べてきたが、男性が乳がんに罹患しないわけではない。稀であるが、男性も乳がんに罹患することがあり、発見が遅れがちで、予後も女性よりも悪いのが特徴である。男性にもわずかながら乳腺組織があり、特に乳頭の直下に限局しているため、男性の乳がんは乳頭の真下にできることが多い。

乳頭の真下にできる乳がんは、女性であっても発見が遅れがちな場所である。女性も自己検診する際は、乳頭の真下も少し気をつけて触ってみることをお勧めしたい。また、男性も自己検診することによって早期発見につながるため、意識を持つようにしてほしい。

小倉 加奈子 病理医

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おぐら かなこ / Kanako Ogura

順天堂大学医学部附属練馬病院病理診断科先任准教授、臨床検査科長。2006年順天堂大学大学院博士課程修了。医学博士。病理専門医、臨床検査専門医。2014年よりNPO法人「病理診断の総合力を向上させる会」のプロジェクトリーダー。病理医や病理診断の認知度を上げる広報活動として、中高生を対象とした病理診断体験セミナーや、がんの出張授業などを幅広く行っている。プライベートは高校1年と小学6年生の2児の母。松岡正剛氏が校長を務めるイシス編集学校の師範としての指導の経験を活かし、医療と教育をつなぐ活動を展開している。

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