資本主義の問題は「結論を出さない」が重要だ 池上彰×丸山俊一「資本主義の闇」対談<上>
時代に“植え付けられた”欲望
池上彰(以下、池上):『欲望の資本主義2 闇の力が目覚める時』は、発売日に買って読ませていただきました。NHKの番組を書籍化したものですが、とにかくタイトルがいいですよね。まさに今、欲望によって資本主義がどんどん拡大、自己増殖し、成長することそのものが自己目的化してさまざまな格差ができている。これをどう考えたらよいのだろうか――そんな問題意識で番組が作られたに違いない、と。丸山さんは、どのような発想でこういった企画を通してゆかれたのですか。
丸山俊一(以下、丸山):まさに、おっしゃっていただいたとおりの問題意識なのですが、発想の原点は、もう少し別のところにあります。実はこの企画は、クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』(2010年)という映画から映像化のヒントを得ました。人の夢の中に侵入して、ある種の考えや記憶を植え付けたり、盗んだりするという物語なのですが、斬新な映像表現を見ているうちに、これは「欲望」をテーマとしても成立するのではないか、と思ったのです。
人間の欲望、ある時代の欲望の形は、実は時代から植え付けられている部分もあるのではないか。自ら当たり前と思い込み欲しているものも、文化的なコードで植え付けられている側面もあるのではないか。経済という現象を、文明論という広い視野でとらえてみることで、なにかが浮かび上がるのでは――そんなトライアルから始まりました。ドキュメンタリーと教養というジャンル、そしてエンターテインメント性を掛け合わせることで、不思議なものが生まれるんじゃないかと感じたんです。