資本主義は、もう「戦争」でしか成長できない 思想家・内田樹×政治学者・白井聡 特別対談
いったいどうやって経済成長を実現する気なのか
内田:グローバル資本主義はもう限界に来ていると思います。資本家が会社を作って投資をして、それが新たな産業を生んで、消費が刺激され、経済規模が拡大してゆく、というのが、産業革命以来の資本主義発展の構図でしたけれど、もうそのサイクルが成り立たなくなっている。今の政権で一番大きな考え違いは「もう成長しない」という事実を決して認めようとしないことですね。
でも、まだ残っているイノベーションのありそうな投資領域というと、ITとバイオくらいしかないわけです。「1投資したら、1.1になって返ってくる」というレベルのローリスク・ローリターンの投資は、資本家には食指が動かない。やはり「1投資したら、100、200になって返ってくる」という「大化け」の可能性がないと投資意欲が湧かない。
その中で、ITとバイオだけは、投資したおカネが何百倍、何千倍になって返ってくる可能性があると見られている。だから、そこに投資家は注目する。でも、「1投資して1000になって返ってくる」ということは、千に一つくらいしか当たらないということでもあるわけです。俗に「千三つ」と言うけども、ITやバイオはもっとひどくて「千一」なんです。専門家に伺ったら、「日本の大学発のバイオベンチャーでビジネス的に成功したケースは、これまで2例しかない」と言っていました。
白井:たった2例ですか。