7月10日投票予定の参議院選挙に向けた動きが本格化している。主要な争点である経済政策について、自民党はアベノミクスの成果を訴える一方で、民進党など野党はアベノミクスに批判的な姿勢を鮮明にしている。アベノミクスが発動された2012年末以前とそれ以降の、経済や金融市場の状況の歴然たる差を踏まえれば、金融緩和強化を主軸にしたアベノミクスはまだ道半ばとしても、経済再生の観点で評価できる点が多いと筆者は考えている。
前回コラムでも述べたが、失敗を挙げるとすれば、前政権が残した負の遺産である8%への消費増税を許容したことであり、10%への増税先送りはその反省を踏まえての必然的な政策転換である。
民進党の主要メンバーは、「10%への消費増税ができなかったことがアベノミクスの失敗」と述べている。こうした主張の論拠に首をかしげる向きもあるとみられるが、このような「思い」の前提には、日本が財政危機に陥っており消費増税が早急に必要な対応だとの認識があると推察される。財政状況は深刻であるといったメディアの報道等に流されがちになりやすい面は否めない。少子高齢化が財政赤字を拡大させるのは誰の目からも明らかで、今後日本の財政状況が厳しくなるという「ストーリー」は理解されやすい。
公的部門の組織改革こそ「真の改革」
少子高齢化が進み一段と社会保障制度が揺らぐこと対しては筆者も心配だが、この問題への現実的な最初の処方箋は、脱デフレを実現して家計所得それと連動した保険料収入を持続的に増やすことである。実際には、消費増税によって家計への負担が高まり過ぎたため、2014年から景気回復は止まり、そして社会保障の収支改善も滞った。
脱デフレを完遂して保険料収入底上げを実現した後には、年金・医療・介護各制度の給付と負担のバランス見直しに踏み出す必要が出てくるかもしれない。保険制度利用の自己負担増加あるいは給付範囲の抑制であり、具体的には高齢者の医療・介護負担の上乗せ、年金給付開始年齢の引き上げ、が挙げられる。
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