筆者が3月時点からメインシナリオとしていた(前回の本コラム参照)
2017年4月に予定されていた消費増税の2年半の延期が、官邸主導で6月1日に決まった。今回の政策判断について、「アベノミクスの失敗」と主張する野党に加え、与党の中からも異論も多かったようである。
実際には、1)2014年4月の消費増税で落ち込んだ個人消費がその後まったく回復せずGDP成長率がゼロ近傍に留まっている、2)数10兆円規模の需給ギャップがある需要不足下で完全雇用にもかなり距離がある、3)一部小売店では値下げを再開するなど原油安などの影響を除いてもインフレ率が低下している、という経済環境を踏まえれば妥当な判断と筆者は考える。
8%への消費増税は時期尚早だった
そもそも、脱デフレが実現する前の8%、10%への消費増税は、旧民主党政権が公約違反のうえ強硬に実現した「負の遺産」と筆者は認識している。実際に、先述した消費増税後の経済状況を踏まえれば、8%への消費増税は時期尚早であったと思われる。
大規模な緊縮財政でブレーキがかかり、金融緩和で始まった成長押し上げと脱デフレの流れをすっかり止めてしまったからだ。安倍政権が8%への増税を決めた2013年の秋口は、負の遺産を解消する政治的コストが大きかったと筆者は当時推察したが、増税を許容したのは痛い判断ミスであったと言わざるを得ない。「負の遺産」の解消ができなかったことがアベノミクスに含まれるなら、その点は失敗だったとの評価もありえよう。
筆者は8%へ消費税が引き上げられる直前に、「消費増税により日本経済はデフレリスクを抱える」「尚早な増税によって財政健全化は逆に難しくなる」「財政赤字などの問題は、巷間論じられているよりも深刻な問題でないことが明らかになる」とコラムで述べたが、残念ながらデフレリスクを高めてしまった。2013年当時8%への消費増税を後押しするエコノミスト・市場関係者が圧倒的多数だったが、筆者は不思議でならなかった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら