3月28日の本欄では、安倍政権が消費増税先送りに動いている可能性が高まっているとの見方を紹介した。5月中旬には、増税先送りの方針を固めたとの観測記事が大手新聞のトップ記事に掲載された。この記事の信憑性について様々な見方があるが、これが実現する可能性はかなり高いとみている。官邸や霞が関を長年取材している複数の記者がチームを組み、安定的な人的ネットワークを持っている大手新聞社の1面トップ記事の重みは全く異なると判断できる。筆者は、これまで消費増税先送りについて、主観的な生起確率は65%と想定していたが、現状は80%まで上昇している。
もっとも、金融市場では、先述したとおり筆者が3月時点で解説していたくらいだから、すでに消費増税先送りが実現すると多くの投資家は予想している。5月初旬の債券市場の関係者を対象にした調査では、8割前後の回答者が消費増税先送りを予想していた(消費増税が実現すれば、もはや大きなネガティブサプライズになる)。なお、4月初旬時点で日本経済研究センターが行った44名のエコノミストなどへのESPフォーキャスト調査では、消費増税先送りを前提としていたのは2名だったが、そのうちの1人は筆者である。
著名な経済学者を招いた意図
以前のコラムで述べたが、経済政策を予想する際に筆者が重視したのは、安倍政権がスティグリッツ教授、クルーグマン教授をいち早く国際金融経済分析会合に招いたことだった。両氏は脱デフレを果たすより前、つまり総需要不足の状況において、消費増税を含めた緊縮的な財政政策に慎重な意見を示していたのは幅広く知られていた。こうした政治の動きをみていれば、それを経済予想に反映させるのは難しくない。
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