「金融緩和が失敗だった」とするのは、上述した経済正常化を否定するということなのだろうか。金融緩和策に代わる政策手段を民進党などは提示していないように筆者には見えるが、対案なき主張が有権者に受け入れられるとは思われない。
さて、消費増税延期の金融市場への影響だが、既に本コラムでも紹介しているが、多数の市場関係者は今回の政策転換を予想しておりサプライズではない。2014年秋口の日本銀行によるQQE2発動+消費増税延期の政策転換は、大幅な円安・株高をもたらした。今回の増税先送りも経済正常化を徹底する点では同じ意味を持つし、日本銀行は近々追加金融緩和に踏み出すと筆者は予想している。
素直にみれば円安・株高の材料だが、2014年時のようなサプライズを伴う大きなインパクトとはならないだろう。8%への消費増税の判断ミスを帳消しにするために、金融緩和強化で脱デフレを再び目指すわけであり、増税延期は当然の政策転換である。ハンデを背負ったアベノミクスが再起動するということである。
日本側の要因で円高になる可能性は低下
追加的に経済成長を後押しするには、1)事実上の増税凍結による家計の恒常所得の引上げ、2)時限的な消費減税の採用が、オプションになるがその実現可能性は現状高くないと筆者はみている。なお、追加的な財政支出に期待する向きもあるが、伝統的に自民党政権が行っていた公共投資発動による偏った特定業種への支出拡大や補助金は、景気刺激効果が限られるし資源配分を歪める弊害が大きく、金融市場は評価しないだろう。公平でかつ効果が高い成長押し上げ政策は、時限的な消費減税と筆者は考える。
一方、為替市場では5月初旬に1ドル100円割れの見通しが主流派になりつつあったが、既に米FRBの夏場の利上げ再開への思惑で円高懸念は和らいでいる。消費増税延期により脱デフレを再び目指す政策が徹底されたので、少なくとも日本側の要因で円高が進む可能性は低くなった。秋口にかけて米景気の復調とFRBによる利上げ再開の可能性が高まる中で、年初の水準をにらみ米ドル高円安基調が続くとみている。年初から、他の株式市場との対比で大きなアンダーパフォームとなっている日本株の反転にも多少は期待できるだろう。
FRBの金融政策や中国リスクについて市場心理の振幅が、ドル円の方向性そして日本株の水準を決定する。これが2016年の金融市場だと思われる。こうした中で、今回安倍政権による消費増税先送りは、春先までの行き過ぎた円高の修正、さらに円高懸念がもたらした日本株のアンダーパフォーム解消、をそれぞれ後押しする一助にはなりえるだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら