消費増税延期でアベノミクスは再起動するか

「円高・日本株出遅れ」を修正する一助になる

金融緩和でインフレ率が高まり始めた初期段階で実質賃金への低下圧力が強まるが、その局面で大規模な消費増税は家計所得を押し下げるネガティブインパクトが大きいことは自明だからだ。

当時は根拠が曖昧な「財政危機」がはやりものだったのでメディアを賑わしていたが、その雰囲気に流された「多数派」の認識は、最近の経済状況を踏まえれば極めて楽観的だったことは明らかだろう。蛇足だが、筆者が投資戦略を考えるうえで、消費増税に対するエコノミストや市場関係者の判断がどうであったかは、景気判断を見定める力量に関する貴重な物差しになっている。

消費増税のネガティブインパクトは甚大だが、実際には、金融緩和のおかげでリセッションは免れ、増税による税収増で2015年まで財政健全化は順調に進んだが、当然の帰結として大型増税で家計の所得と消費が落ち込んだ。そして、企業・政府vs家計の構図で深刻な所得分配の歪みが生じてしまった点については過去のコラムで紹介したとおりである。

そして、日本銀行の政策目標である消費者物価コア指数は2013年まで順調に上昇したが、消費増税による成長率鈍化と原油資源安のダブルパンチで2016年になってマイナスの領域まで逆戻りした。歴史的な資源価格下落のインフレ率への影響が大きかったが、日本銀行も消費増税の下押しインパクトを過小評価したため金融緩和が不徹底にとどまり、2%インフレ実現が遠のいてしまった。

「金融緩和は失敗だった」はおかしい

ところで、民進党など野党は大胆な金融緩和を掲げたアベノミクスが失敗だったと主張し、内閣不信任案を国会に提出したが、筆者には理解し難い。結果的に日本銀行の金融緩和が不徹底で、増税の景気下押しを払拭できず脱デフレが止まったのは事実である。一方、労働市場において2013年から雇用者数が増加に転じ、約100万人の雇用が創出され、非正規労働者を中心に賃金も上昇している。労働市場の需給が改善する状況は保たれているわけだが、標準的な経済理論の教えを踏まえればこれは金融緩和政策の成果である。

そして、標準的な経済理論に忠実なクルーグマン教授、スティグリッツ教授などが安倍首相らに提言したとおりに、金融財政政策による総需要拡大を徹底することが現時点の最優先の政策である。脱デフレを最優先することで2%インフレが安定的に実現し、そして就労を希望するほとんどの人が職を得る完全雇用の状況に至る。また、総需要政策の徹底が財政収支を改善させる最も確実な政策手段である点については、4月11日の本コラムで説明した。

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