資本主義は、もう「戦争」でしか成長できない

思想家・内田樹×政治学者・白井聡 特別対談

だからあくまで経済成長を追い求めるならば、「すべてを失った状態を創り出そう」ということになる。つまり戦争です。地震のように天災ですべてを失くすということもあるけれども、それだと自然まかせになってしまう。となると戦争しかない。

今、日本でこんなに景気が悪いのは、別に安倍首相ひとりのせいではなくて、世界の資本主義全体が煮詰まってきているということが大前提としてある。ヨーロッパは多くの国で日本以上にひどい状況だし、中国や東南アジアも危うさをはらんでいる。この局面から脱出するには、大量破壊をやって人為的に需要を創出するしかないでしょう。

内田:そうですね。「あとは戦争しか手が残っていない」と考えているビジネスマンはいっぱいいると思います。

白井:そういう前提を置くと、安倍政権がこれまでやってきた政策はすべてつじつまが合うんです。武器輸出を解禁し、防衛装備庁をつくって兵器生産を儲かる産業にしていきたいという政策の狙いは、「戦争から生まれる商機を逃してはならない」ということでしょう。

内田:人間が生きていくため絶対に必要な社会的インフラというものがあって、それが破壊されたら、また一から造り直さなければならない。それがないと生きられないんですから、仕方がない。だから、未来を担保に差し出しても、命を削っても、ある限りの国民資源を吐き出して、建物を造って、道路を造って、水道を通して、交通を通して、破壊されたものを全部ゼロから造り直さなければならない。確かに、そうすれば膨大な需要が発生する。でも、これは国民的な「ストック」を食いつぶして、それを「フロー」に流し込んでいるだけの「みかけの繁栄」に過ぎません。国そのものは痩せ細ってゆく。

兵器産業こそ理想の産業

白井:リベラルの論客でも、「脱成長という考え方ではやっていけないだろう」と言う人は多いですが、これからの日本で経済成長するのは簡単なことではないわけで、あくまで成長が必要なんだというのなら、戦争まで覚悟しなければいけない。

内田:本当にそのとおりです。世界の中で成長率がトップクラスの国は、どこも政情不安定な国なんです。世界の成長率第1位は、2012年がリビア、2013年が南スーダン、2014年がエチオピア。その他でも、トップ10に入っているのは、だいたい内戦をやっているかクーデターがあったか軍事独裁か、そういう国です。政情不安定な国で経済成長率が高いというのは、経済成長を駆動しているのが生身の人間から搾り取ったものだということを意味していると思います。戦争というのは、国民の命を政府が操作できる状態のことですからね。命と引き換えなら、人間はどんな資源でも吐き出しますから。そうやって経済的な浮揚力を得ている。でも、その源泉は人間の苦しみなんです。

白井:『戦争と資本主義』(講談社学術文庫)で、「戦争なくして資本主義はなかった」と説いた、ヴェルナー・ゾンバルトは正しかったわけですね。

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