資本主義の問題は「結論を出さない」が重要だ 池上彰×丸山俊一「資本主義の闇」対談<上>

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丸山:視聴者や読者の方々からは「答え」を求められるところがありますが、僕自身、まずは「問い」を共有したい、「問い」を立てることを大事にしたいという思いがありました。

池上彰(いけがみ あきら)/ジャーナリスト。1950年長野県生まれ。1973年慶應義塾大学卒業後NHK入局。取材経験を重ね、後にキャスターも担当。「週刊こどもニュース」ではお父さん役を務めた。2005年より、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在、東京工業大学特命教授。名城大学教授。2013年第5回伊丹十三賞受賞。2016年第64回菊池寛賞受賞(テレビ東京選挙特番チームと共同受賞)。著書に『知の越境法』他(撮影:梅谷 秀司)

池上:その問いに対して考えるのがいいわけです。「結論は出さなくていい」というのが、結論なんですよ。番組を作っていると、「救いがないよね」という話になって、つい無理やりに明るい答えを出すということが起こりがちなんですよね。でもそこで「結論が出ないのがいいじゃないですか」と通してしまうのは、相当勇気がいることだと思います。

現代人はすぐに答えを求める傾向がありますよね。それはもちろん、安易に答えを出すほうが、数字がとれるという現実もあるわけですが、結論がないと、カタルシスが得られず、なんとなく不満が残る人が多いわけです。でも本当は結論を出さないことが大事なんだと思います。

私も若かった頃は、結論がいると思っていました。でも年を取るにつれて、安易に結論を出そうとすることが間違いなんだと思うようになってきたんです。それで、自分の番組では、タレントさんに質問されると「それはあなたが考えてください」と言うようにしています。丸山さんとやり方は違うけれど、発想は同じかもしれませんね。問いを投げかけて、最後は「あなたはどう思いますか?」。この手法は、メディア人として必要なものでしょう。

マルクスを見直す時代

池上:現代の高度経済社会は、人文科学のようなほかの視点から見てみなければ読み解けないとも思いますね。経済学者は、目の前に立ち現れてきたことの本質とはなにかを一生懸命考えますよね。数理経済学であれば、数式にすることによって将来なにが起きるのかを考える……ところが、しょせんは人間が作った数式ですから、どこかでとてつもない破綻が起こるわけです。

マルクスは、この現象を長い歴史のなかでどう考えるかということをやった。マルクスの手法によって、いかに資本主義が非人間的なものかを分析することができるんですよ。そこがやはり、近代経済学というものとはまったく違う部分だったのだと思いますね。

社会主義が崩壊し、ソビエトがあんな酷い状態になって、フランシス・フクヤマが「歴史の終わり」と表現したように、ある時期から「マルクスは死んだ」「ケインズは死んだ」なんて言われて、歴史的に物事を分析することが終わったのだと思われた節がありました。しかし、リーマン・ショックによって、やはりそうではなかったという見直しが必要になった。マルクスの再評価が起きたのではないでしょうか。

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