真備町を襲った洪水は長年の懸念事項だった 小田川北側への避難指示は堤防決壊の4分前

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ただ、同時に河川が短く急な斜面を流れていることから、いったん大雨が降ると洪水が起こる危険があるとも示されている。 

浸水した家からボートで救助されたある80歳の男性は、ハザードマップについて「役所から来た何かのお知らせの1つだと思った」と話した。「水がすごい速さで上がってきた。警戒が足りなかった」。

堤防決壊の4分前に避難指示

国交省は2015年に「水防災意識社会再構築ビジョン」を策定したが、避難勧告・指示に関しては地方自治体に任せられた。

伊東香織・倉敷市長が、最初の避難指示を小田川の南側の地区に出したのは7月6日午後11時45分。7日の午前1時30分には町の拡声器、携帯電話のメール、テレビ、ラジオを通じて小田川北側の住民に避難を指示した。

山下篤志さん(REUTERS/Issei Kato)

小田川北側の地区に避難指示が出されたのは、小田川に流れ込む高馬川の堤防が決壊する4分前だった。

伊東市長は会見で、避難指示のタイミングについて見解を聞かれ、河川の状況を見ながら基準に従って指示を出したと述べた。

真備の住民の1人、山下篤志氏(63)の家族は避難できたものの、近所に住む90代の男性に、小田川からわずか数十メートルの自宅から避難するよう説得することはできなかった。その後、この男性の死亡が確認された。

がれきの積まれた自宅の前で、山下氏は「また、同じようなことが数年であるかもしれない」と話す。「妻は、もうここには住めないかもしれないって言っている」と述べ、うつむいた。

(Mari Saito, Linda Sieg, 宮崎亜巳 編集:田巻一彦)

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