「青田買い」「AO入試」が今後も増え続ける必然 「学力だけ」では大学に入れなくなりつつある
実際、たとえば甲子園でかなりのところまで勝ち進んだとしても、その生徒自身が格別の貢献をしていなければ不合格となる。
一方、野球部がなかった高校に入学し、仲間と共に1年がかりで部を立ち上げ、予算や練習場所の確保に日々苦労しながらも、3年生の時には県大会でそこそこの成果を挙げた生徒は合格にしたという。
今流に言えば、そこでは思考力・判断力・表現力、コミュニケーション能力や対人関係の調整能力、粘り強さや感情の自己調整力などが評価の対象だったことになる。
そして、それらは、2020年以降段階的に全面実施となる新学習指導要領の学力論、「資質・能力」を基盤とした学力論の中核を成す学力側面そのものである。
知識の詰め込みで大学に入れる時代は終わりつつある
言うまでもなく、知識・技能は引き続き重要な学力側面であり、それを欠いては何も始まらない。と同時に、大学の学修はもとより、人生を成功に導くのに知識・技能だけでは不十分なこともまた、近年の研究が明らかにしてきた通りである。
もちろん、現在行われている推薦・AO入試のすべてが、このような学力論にしっかりと立脚し、さらに適切な方法で十二分に査定しているとは言えない。量的拡大に伴い、その質の改善や一層の向上が伴わなければ、「青田買い」の批判は免れえないだろう。
その一方で、私立の一般入試の主力である3教科入試のような、知識・技能に高い比重をかけた方法で多数の入学者を決定するあり方にも、学力論的にさまざまな問題というか、構造的な限界がある。
一般入試についても、さらに幅広い学力側面の査定が望まれるのであり、センター試験の「大学入学共通テスト」への移行と相まって、それは結果的に質の高い推薦・AO入試的な方向に向けての重心の移動となるに違いない。
たしかに大きな変化ではある。しかし、欧米では多様な指標で選抜を行うのがスタンダードであり、それに近づいているだけだとも言える。
いずれにせよ、膨大な知識の単なる所有のみで大学に入れる時代が終わろうとしていることだけは確かである。
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