「国家優先」に覆われた自民党改憲案は危険だ 前川喜平氏が指摘する「26条改正案」の問題点

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前川氏は「自民党改憲案は個人を国家に従属させる国家優先の思想に覆われている」と指摘する(写真:Bloomberg/Getty Images)

自由民主党は去る3月22日、4項目の憲法改正案をまとめた。「9条の2」の追加や緊急事態条項の問題点ばかりが取りざたされているが、26条の改正案についてはあまり注目されていない。

自民党が26条を改正の俎上に載せたのは、教育(特に高等教育)の無償化という課題があったからだが、この改正案が実に問題なのである。

「無償化」はすでに実現している

自民党改憲案では現在の26条1項、2項はそのまま残し、次のような3項を加えることになっている。

「国は、教育が国民一人一人の人格の完成を目指し、その幸福の追求に欠くことのできないものであり、かつ、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない」

自民党としては、教育無償化のための憲法改正を主張する日本維新の会を取り込みたいという意図もあるのだろう。加えて、国民の賛同が得やすい改正点を盛り込んでおきたいという思惑もあるのだろうが、「教育の無償化」という課題そのものは十分国民的議論に値する。

高校など後期中等教育の無償化は、日本が1979年に批准した国際人権規約に盛り込まれていたが、この条項を留保し続けてきた政府は、民主党政権だった2012年に留保を撤回し、現在はこの規定に拘束されている。

また、第二次安倍政権においても、規模が小さいながらも、大学・専門学校の学生に対する給付奨学金が制度化され、「漸進的無償化」が進められている。幼児教育についても毎年少しずつ無償化の範囲が広がっている。

安倍政権によって朝鮮高校が排除されたものの、無償化は曲がりなりにもすでに実現している。

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