「国家優先」に覆われた自民党改憲案は危険だ

前川喜平氏が指摘する「26条改正案」の問題点

「子に普通教育を受けさせる義務」は、「納税の義務」「勤労の義務」と並んで、憲法に規定された「国民の三大義務」などと言われることがある。しかし、そもそも憲法に国民の義務を規定する必要はない。憲法は国民が定め、国に守らせる規範だからだ。

特に、「義務教育」は誤解しやすい言葉だ。

現行26条2項が定めているのは、子どもの「普通教育を受ける義務」ではなく、保護者の「普通教育を受けさせる」義務である。しかもその義務は、子どもを無理やり学校に連れていく義務ではなく、何らかの普通教育を受けられるようにする義務なのである。

そういう保護者の義務は、法律に規定すればよいのであって、憲法に書き込む必要はない。実際、教育基本法には憲法と同様の定めがある。
憲法上、本当に義務を負っているのは国なのである。

しかし、現実には国は「すべての個人」に「無償の普通教育」を保障していない。不登校の子どもたちに十分な対策をとっているとは言えないし、保護者のネグレクトにより学校に行けない子どもも十分に救われてはいない。

若い頃に学校へ通えなかった高齢者もまだたくさんいる。ほとんど学校に通わない(または通えない)まま中学校の卒業証書を渡された人たちや、十分な基礎教育を受けないまま日本に渡ってくる外国人もいる。

改憲より先にやるべきことがある

2016年12月に超党派議員連盟を母体とする議員立法によって制定された「義務教育の段階における普通教育の機会の確保等に関する法律」(教育機会確保法)は、すべての個人に無償普通教育を保障すべき国(自治体を含む)の義務の履行を、大きく一歩前に進めるものだ。

当面、フリースクールに通う子どもたちへの支援の充実を図り、公立夜間中学等の量的・質的充実を図るなど、この法律の指し示す方向での施策を進め、国籍や年齢を問わず学習する機会が保障されるようにすることが必要だ。

それは憲法改正よりも前にすべきことなのである。

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