外国人雇用の拡充は「無能な経営者」の甘えだ

生産性向上のチャンスを逃す「愚策」を許すな

低賃金の外国人労働者の受け入れ拡大は、日本にとって「自殺行為」だといいます(画像:EKAKI / PIXTA)
6月15日、政府が発表した「骨太の方針」に「外国人労働者の受け入れ拡充」が盛り込まれ、注目を集めた。
事実上の「移民政策」ともとれるこの政策に対し、デービッド・アトキンソン氏は「たいへん危険だ」と警鐘を鳴らしている。外国人労働者の受け入れ拡充は、経営者以外だれも幸せになっていない現在の「一億総貧乏」構造の延命措置になりかねないというのだ。
34年間の集大成として「日本経済改革の本丸=生産性」に切り込んだ『新・生産性立国論』を上梓したアトキンソン氏に、「移民政策」の危険性を解説してもらう。

「一億総貧乏大国」日本

この連載で何回も紹介しているように、日本が世界第3位の経済大国でいられるのは、人口が多いからにすぎません。日本のGDPがドイツの1.3倍の規模(購買力調整後)なのは、技術や勤勉性が優れているからではなく、国民の数が1.5倍だからです。先進国においては、GDP総額のランキングは人口のランキングによって決まるのです。

『新・生産性立国論』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

しかし、人口が1.5倍なのにGDPが1.3倍しかないことからもわかるように、日本経済の構造は一億総活躍どころか、「一億総貧乏」構造です。個々の労働者は、その能力にふさわしくない、非常に低い所得しかもらっていません。何回も紹介していますが、日本人は人材評価(WEF)では世界第4位(2016年)なのに、1人あたりGDPは世界第29位(2017年、購買力調整済み)であることからも、それは明らかでしょう。

先進国の場合、人口が増えている時代には、所得が低くても国のGDP総額は伸びます。しかし、人口が減りだすと、低所得の仕組みは国民を不幸にするだけです。

今の日本経済は国民が豊かになるか、国民の負担がさらに激化するかの「分かれ目」に立っています。それを決めるのは「政策」です。経済の構造維持を優先して変化を止め、国民に負担をかけるのか。それとも、国民の幸せのために経済の構造変化を肯定して促進するのか。今まさに、それが問われているのです。

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