外国人雇用の拡充は「無能な経営者」の甘えだ 生産性向上のチャンスを逃す「愚策」を許すな

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私が社長を務めている小西美術工藝社でも、昔は何の努力もしていないのに、若い人が自ら「雇ってください」と言ってきたそうです。しかし今は、こちら側から積極的に探しに行かないと誰も来てくれません。私たちの業界には、昔のように就職希望者が現れるのを待っているだけの会社が多数あり、皆若い人の獲得に苦労しています。その結果、高齢化が著しい業界になってしまっているのです。

言うまでもなく、雇用需要が一定の場合、若い人が減り続ければ、若い人は所得の高い企業を選ぶ傾向が強まります。社員数の少ない企業は、生産性を上げて所得を増やすことができなければ、ますます人集めに苦労することになります。その結果、廃業や倒産、統合が増えることが予想されます。

企業の統合も「必然」だ

生産性を高めるために規模の経済・範囲の経済の効果を求め、企業間の統合が増えることが予想されます。この動きは、すでに始まっています。

企業数が減るという結論は、さまざまな観点から見ても必然的だと言えます。需要者が減ることが最も大きな理由ですが、さまざまな要素を考えても、論理的に考えれば企業数は減るという結論に変わりありません。

たとえば、出生数と企業数の関係を考えても、企業数は必然的に減るという結論が導かれます。

2060年には、日本で産まれる子どもの数は50万人台に減ると予想されています。出生数を仮に50万人として、企業数を350万社と今のまま変わらないと仮定すると、企業1社に対して生まれてくる子どもの数は、今のちょうど半分の0.14人まで減ることになります。つまり、人を雇いたくても、7年に1人しか雇えないという計算になるのです。

また、企業1社あたりの国民の数は、今の36.3人から、2060年には24.8人まで減ります。定年時期を引き上げたくらいでは、労働者不足の問題は解決されないことは明らかです。

別の切り口で見ると、全国民に占める社長の割合は現在2.8%ですが、何もしなければ、2060年にはそれが4.0%まで上がることになります。

全体でみると、日本経済の規模は世界第3位で、大きいのは確かです。しかし、それは人口が多いからであって、日本人が豊かだからではありません。このことは中国を見れば明らかでしょう。中国経済は世界第2位で日本をしのぐ大きさです。しかし、それも10億人を超える人口がいるからであって、決して国民の生活水準が高いわけではありません。

日本はすでに人口減少のフェーズに入ってしまっていて、今後何十年にわたって人口が減少することが確実視されています。少なくなる人口で今の経済規模を維持するためには、生産性を高めて、一人ひとりの生活水準を高めるしか方法はありません。これは、『新・生産性立国論』やこの連載で、繰り返し説明してきました。

幸い日本には優れた労働者がいます。前述のようにある国際的な評価機関によると、日本の人材評価は世界4位です。また、日本には秩序が高い社会、高い学力や技術力、勤勉で手先の器用な労働者といった、生産性を高めるためのリソースにあふれています。実際、このことを誇りに思っている国民もたくさんいます。これだけリソースにあふれた国なのですから、生産性を向上させられないはずはないのです。

しかし、最近、生産性の向上を妨げかねない政策がうごめいています。移民政策です。

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