1979年7月1日。ソニーが発売した新製品「ウォークマン」の衝撃は39年後の今でもはっきり覚えている。大学生協の家電コーナーで初めて試聴したウォークマンは、貧乏学生には高嶺の花(3万3000円)だったけれど、高音質な音楽を外に連れ出す自分の姿をうっとり想像させるに十分な魅力を持っていたように記憶する。
彼女と2人で楽しむための配慮からか、ヘッドホン・ジャックが2つ付いていたのも斬新で、これまでの製品とは形態の異なる小型のヘッドホン自体も未来を感じさせる存在だった。その後音楽を楽しむ機能は進化と変化を繰り返し、今ではスマホとWi-Fiさえあれば膨大な量の音楽をいつでもどこででも楽しめるようになったのだからすばらしい。ウォークマンでカセットテープを繰り返し聴いていたことを思うとまさに隔世の感だ。
セラピーのためのプロダクトから一般向けへ
そして最近、その機能を生かして開発されたスピーカー内蔵クッション「HUMU(フーム)」に注目が集まっている。"音に包み込まれるような不思議な感覚"が体験者の間で話題のフィンランド製クッションは、いったい何がすごいのか。開発メーカーFlexound社のCTOであるユッカ・リンジャマ氏に聞いた。
――「HUMU」を作ろうと思ったきっかけは?
博士号を取得したヘルシンキ工科大学では「振動」を研究テーマとしていました。振動がどのように伝播するか、といった内容です。その後ノキアに入社して、振動、特に触覚フィードバックについての研究に携わったのです。
携帯電話の振動による通知やタッチスクリーン触れた時に得られるフィードバックなどのコンセプト開発です。その後独立して自らの研究を行っている中で、拡張音響を利用したプロダクトのアイデアが浮かび、これを商品化するために設立したのがFlexound社です。
そこで最初に手掛けたのは、発達障害のある子どもたち向けセラピーのためのプロダクトでした。心理療法セラピストである妻からの「患者のために、音を聞かせ振動を与えることでリラックスできるものを作ってほしい」というリクエストに応えた製品「Taikofon」を制作。その後、このコンセプトを使って一般の人たちが楽しめるプロダクトを作ろうということで開発したのが「HUMU」です。
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