過剰医療大国ニッポンの不都合すぎる真実

いまだバリウム検査に偏る胃がん検診の謎

「聖域」だらけの医療の現実(写真:YsPhoto/PIXTA、デザイン:山根 佐保)

ほとんどの風邪には抗菌薬(抗生物質)が効かないことは、医者の間では常識だ。風邪の原因の9割はウイルス感染症とされるが、細菌に効き感染症の治療にかかせない薬である抗生物質はウイルスにはそもそも効かない。

だが、風邪で通院すると、今でも「フロモックス」や「クラビット」などの抗生物質が処方されることが少なくない。「抗生物質が風邪の特効薬だと誤解している患者はまだ多い。『なぜよく効く薬をだしてくれないのか?』といぶかしげな表情で迫られると、つい経営のことも考えて希望どおりに処方してしまう」とある医師は打ち明ける。

抗生物質を多用しないよう厚労省も動いた

『週刊東洋経済』は5月21日発売号(5月26日号)で「医療費のムダ」を特集。命や健康を脅かす過剰な検査・検診、あふれる残薬、人工透析、整骨院、終末期医療といった、「聖域」だらけとなっている医療の現実を描いている。

『週刊東洋経済』5月21日発売号(5月26日号)の特集は「医療費のムダ」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

抗生物質の多用が続くと、薬が効かない耐性菌の広がりにつながりかねない。厚生労働省は昨年、重い腰を上げ、抗生物質の適正使用の手引を作成。細菌感染が疑われる重症のときに使用を限り、軽い風邪や下痢には用いないよう勧めている。今年4月の診療報酬改定では、乳幼児の風邪や下痢に際し、適切な説明により抗生物質の処方を避ければ、医師に報酬が支払われる仕組みが新設された。

風邪に抗生物質を処方するような「過剰診療」「効果の薄い医療」が医療現場では蔓延している。過去の慣習や医療関係者の既得権益、世間の無理解などが背景として複合的に絡み合う。日本の医療費が膨張の一途をたどる中、このままでよいのだろうか。

過剰な医療を見直す動きは、今や世界的な潮流だ。代表的なのは、北米の医師が中心となり治療や検査が過剰になってないかを検証する「チュージングワイズリー(賢い選択)」運動である。2012年に米国内科専門医認定機構(ABIM)財団が、賛同した専門学会からそれぞれ提示されたムダな医療の「五つのリスト」を公表し、本格的にスタートした。

運動はカナダや北欧、豪州などにも広がり、70超の学会が約500項目のムダな医療のリストを打ち出している。2016年10月には佐賀大学名誉教授の小泉俊三医師(特集内でインタビュー)を代表に日本支部も立ち上がった。『週刊東洋経済』の特集「医療費のムダ」では医療経済ジャーナリストの室井一辰氏の協力を得て、同リストの中から、日本の医療現場でもよく行われている60項目をピックアップし解説している。

週刊東洋経済5月21日発売号「医療費のムダ」ではムダな医療60選を紹介している(編集部撮影)
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