「危機感を持て!」と子を煽ってもムダな理由 勉強に身が入らない子に親がやりがちな失敗

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それは「苦手なものに喜んで向かっていくポイント大作戦」です。

簡単にいうとこういうことです。小4生にとって、3年後の中学受験は、遠い、遠い先のお話で、そのような遠い未来の話をいくらしても意味はまったくありません。親は大人ですから、先が見えてしまい、このままいくと危ないからといって、転ばぬ先の杖を出します。そんな見えない先のお話は、子どもにとっては空想の世界でしかない、意味がわかりません。

そこで、「目の前にニンジンをぶら下げる」方法を取ります。この言葉は通常マイナスの意味を含んで使われますが、ここではそのような意味ではなく、「目の前のニンジン」とは「目先の目標」ということです。

もちろん遠い先にぶら下がったニンジンを見て、進んでいく子どもも世の中にはいることでしょう。そのような子はそのまま進めばいいのですが、圧倒的多数の子どもたちは、そのような先のことよりも目の前のことに興味関心があります。その自然の流れに沿った方法をとるとうまくいくことがあるのです。

「仕組み」を入れる

しかし、ただニンジンをぶら下げただけでは面白くありません。もう少し「仕組み」を入れてしまいましょう。

それは、「苦手を克服しなければならない」ではなく「苦手がたくさん欲しい」という仕組みを作るのです。「そんなことできるのか?」と思われるかもしれませんが、できるのです。筆者が考案した「子ども手帳」もこの考え方を導入しています。

次のような手順を試してみてください。

1.その子にとってハードルが高いことを紙に書き出す
(川嶋さんの例で言えば、「字をていねいに書いて、次は間違えない」など)
2.書いた項目にポイントを設定する
(例:字がていねいに書けたら5ポイント、さらに次のテストで間違えなければ5ポイントのボーナスポイント。ハードルが高いことはポイント数を高めに設定する)
3.バージョンを設定する
(例:ポイントがたくさん増えるとバージョンが上がる。ちょうど、武道の帯の色のように。10ポイントでバージョン2に、20ポイントでバージョン3など)
4.カレンダーにバージョンを記録したり、ポイントをグラフにしたりして「見える化」する

いつまでたっても苦手は苦手のまま、やる気もなかなか出ないのであれば、苦手がたくさんあって、それを克服していくと得をする自分がいるということを実感させてしまえばいいのです。そのためには、「ポイント」「バージョンアップ」「見える化」といったことが、子どもがハマるキーワードなのです。

このような仕組みで動いているうちに、やがて子どもは、「できるようになっている自分」を感じることができるでしょう。そして、今は遠い未来である中学受験に対しても、次第に現実的に意識をするようになっていくことでしょう。

石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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