「職場の無駄話」がうつ病予防に有効なワケ 「帰りにちょっと1杯」が激減している

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実際、日本の自殺者の割合は約70%が男性で、いろいろな原因はあるにせよ、1つには、やはり男性のほうが話をする機会が少ないということが挙げられます。自殺者が3万人の大台を超えた1997年ごろから、企業は経費節減を目的として、社員旅行や運動会を廃止したり、忘年会や新年会、歓送迎会などを会費制にするなど(今では当たり前ですが)の措置を講じました。そのような背景によって、職員同士が職場以外でのコミュニケーションを取る場が失われ、さらに景気の悪化と個人主義の流れが重なり、「帰りにちょっと1杯」も激減しました。

馴れ合いを推奨するわけではありません。しかし、相手のことを少しでも知っていれば、メールを送るにしても、電話で問い合わせるにしても気持ちが違います。信頼関係を築きやすく、相談もしやすくなります。警戒心を抱かずに済めば、気軽に確認ができ、すれ違いを防いでいくことも可能なのです。

自分の気持ちをすっきりさせることができる

1日の大半を過ごす職場が業務の報告と連絡しかしないという環境では、自分の思いを話せるわけがありません。そのような環境で人が追いつめられるのは、1つの原因として明らかです。

なぜなら、自分の状況や思いを「話す」ことには、カタルシス効果(浄化作用)があり、「話すこと」によって、自分の気持ちをすっきりさせることができるからなのです。

気持ちは、目に見える形がありません。概念と呼ばれる感覚的なものです。もやもやとした気持ちを人に伝えるときには、当たり前ですが、共通の言葉に置き換えます。「こんなことがあって、こんな気持ちを持った」とか、「こんなことを言われて、こんなことを考えた」などという具合にです。

自分の中で、言葉に置き換えて、相手に伝わるように話すというプロセスが、自分で自分の漠然とした気持ちを整理することにつながります。話しながら、自分の気持ちが整理されていくわけです。その繰り返しが、心の安定を生み、癒しをもたらします。

いきなり、深い悩みを打ち明けたり、無理に相談する必要はありません。反対にこんなこと話さなければよかったという後悔を持ってしまうこともあるかと思いますので、日常に起こった出来事や、それに伴う気持ちを気軽に話せる場を持つことが大切です。

浅いところから徐々に話すと、話しをすべき相手と配分がわかるようになります。まずは、職場でちょっと気になったことを気軽に相談できたり、日々、抱いた思いを話せる場を持てるといいですね。

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