まず製品の「長所」からみていこう。
タッチパネルを使ったジェスチャーで音声アシスタントを呼び出して情報を引き出したり、あるいは音声でスマートフォンを操作、あるいは着信した情報の読み上げなどを行ってくれる点などは、ヒアラブルデバイスとして順当な機能といえる。
装着したことを検知し、その時点での最新ニュースを読み上げてくれたり、前回の使用中に音楽を再生していたならば、読み上げ後に自動的に音楽を再生してくれたり、1日の始まりにニュースを伝えたりしてくれる。
多くの場合、アプリやサービスがもたらす機能や価値は過大な評価が与えられがちだ。アプリとサービスに共通する部分、すなわちソフトウエアで実現できる機能は、あっという間に真似をされ、時にはもっと進化した形で“我こそがオーソリティである”と宣言されることすらある。いや、あらゆる形でハードウエアが開発され尽くした現代では、それでもアプリやサービスで差異化をしなければならないのかもしれない。
しかし、Xperia Ear Duoはオーディオという成熟した技術の枠組みの中で、他とは決定的に異なる価値観を引き出してみせた。今後、この製品の後を追う製品が出てくるかもしれないが、それでも本製品のユニークさ、先進性が色褪せることはないだろう。
Xperia Ear Duoは、いわゆる左右独立型の“完全ワイヤレス”なステレオイヤホンだが、その位置付けはハイファイ向けのイヤホンとは少々異なっている。
音質ではなく機能面でのユニークさを訴求した製品に、同じくソニーモバイルコミュニケーションズが発売していたXperia Earがある。しかし、この製品が片耳だけに装着するモノラル構成だったのに対して、Xperia Ear Duoは左右の耳に装着するステレオ構成になった。
そして、このステレオである点が、後述するように、本機がきわめてユニークな存在と言い切れる理由にもなっている。
スマートフォンを活用するためのデバイス
ヒアラブルデバイスといっても、そのコンセプトはメーカーごとにさまざまだが、スマートフォンとともに使用し、身にまとうように装着するオーディオデバイスという点は共通している。一般的なイヤホンと異なるのは、音楽を聞くためだけではなく、スマートフォンを活用するうえでつねに装着したいと思うデバイスであるということだ。
そして、Xperia Ear Duoは毎日、常時装着していても快適で、しかも周囲の音を100%遮断しないという点が実に新しい。
本機で聞く音楽は決して“最高の音質”というわけではない。一般的なオーディオ用イヤホンの枠組みで言えば、低域が不足しているうえ、解像力も限定的。情報量が少ないため、音場に漂う空気感を表現しきれない……といった評価になるだろう。
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