28歳、暴力夫から逃げた「一児の母」の間一髪 保護施設シェルターに命を救われた

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1軒目のシェルターに1泊した後、2軒目のシェルターに案内される。何かの施設の一角のような感じだが、最初のところと違って、アットホームな雰囲気。シェアハウスのような感じに見えた。3部屋くらい用意されていて、ダイニングはほかの人と一緒に食べるようになっていた。風呂は交代で入るような感じで用意されていた。

「隔離されているので、自分の部屋から出るにも報告しなくてはいけなくて。外出は3時間以内。スマホやインターネットは使えなかったです。気持ちは不安定でしたね。夫から逃げられた安堵でうれしい気持ちと、これから頑張らなきゃと気合いが入りながらも、落ち込むこともあったりして」

それでもここでの生活は、とてもよくしてもらったという印象だ。

「お世話をしてくれる人がいるのですが、その人が1歳半の子どもとよく遊んでくれました。ときどきカウンセラーさんが来て、心のケアもしてくれて。本当に至れり尽くせりでしたね」

短期間だったが心が休まったひと時だった。家を出る前には考えられなかった状況である。

自分と同じ境遇の人もあきらめないでほしい!

2軒目のシェルターで生活しているとき、テレビでは、高野さんと同じようなモラハラを受けた人が殺人を犯し、逮捕されるという事件が流れた。その事件にすごく心が痛んだという。

「シェルターという一時的な保護施設があることってあまり知られていないですよね。私も知りませんでした。でも、もし知っていれば、モラハラやDVで精神的に追い詰められた人が事件を起こしたり、命を落としたりすることが防げるかもしれません。本当に必要な人にはシェルターという安全な場所があるということをもっと知ってほしいです」

自分も一歩間違えれば、自殺をしていたかもしれない。その瀬戸際で助けられた。

「シェルターは税金で回っている施設だそうで、こんなすてきな税金の使い方があるのかと思いました。だって『人の命を救う施設』ですから。私もこれからいっぱい働いて、助けてもらった分、税金を払っていこうと思います」

その後は自由度の高い3軒目のシェルターに移り、保育所ありの仕事を見つけ、アパートに移り住めた高野さん。夫とは、家を出たきり一度も会っていない。

「私は『マザーズハローワーク』で仕事を見つけました。今はシングルマザーを支援する仕事紹介所も増えているようです。保育園も運よく見つかり、子どもと2人で新生活をスタートできるようになりました。あきらめないでよかった」

ギリギリのところであきらめなかったからこそ、高野さんの道は開けていったのだ。今後は「図書館を利用するなど工夫して、モノが最低限でも楽しめる生活を極めたい」と笑顔で話す。

「また、自分の経験してきたことを生かして、悩んでいる人の気持ちを聞き、支援してあげられるような人になりたいと思っています」

今はなんと心理学を勉強していて、カウンセラーの夢に向かって進んでいるという。副業ではライターとしても活動中だ。家を飛び出てから丸2年。現在も離婚調停中なのだが、もう自信を失うこともブレることもないだろう。

斉藤 カオリ ジャーナリスト

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さいとう かおり / Kaori Saito

ジャーナリスト・魅力覚醒コーチ。見過ごされがちな当事者の声を拾い上げ、社会に伝えてきた。現場取材を軸に記事を執筆する一方「カオリ版魅力覚醒講座」などを主宰し、延べ1000名以上に「言葉を通じて自分を理解し、力を発揮する方法」を伝えている。著書に『未経験から始める しっかり稼げる おうちライターの教科書』。言葉を媒介に、人と社会を結び直す活動を続けている。公式サイト

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