「苦しいです。本当に苦しい。ずっと、どこか飛び降りることができる建物がないかな、って上を向いて歩いていたし……。息子のことを思い出して、やっぱり死ぬことを考えるのはやめようって、最近、やっとそう思えるようになった」
千葉県某市。街道沿いにチェーン系のロードサイド店が並び、同じような風景が続く。待ち合わせ場所に三井恵子さん(44歳、仮名)は疲れ切った表情でやって来て、何度もため息をつく。彼女には笑顔はなく、陰鬱なオーラをまとっていた。
バツ2のシンママ(シングルマザー)。駅から徒歩20分と交通の便が悪く築年数が古いアパートに、県立高校に通う次男(18歳)と暮らす。次男は中堅私立大学に推薦が決まり、学費はすべて日本学生支援機構の有利子奨学金で賄う予定だ。長男(23歳)は昨年から独立して都内で暮らしている。社会人になって大学奨学金の返済が始まり、経済的にはギリギリの生活を送っているという。
「今、テレビも行政も家族、家族って言うじゃないですか。ちゃんとした家族がいれば、絶対、私みたいにはならないと思う。親が助けてくれたり、兄弟が助けてくれたり、おばさん、おじさん、おじいちゃん、おばあちゃんが助けてくれたり。私はそれがいっさいない。だから福祉事務所に何とか説明して生活保護を受けて、最近、やっと仕事が見つかって、頑張ってダブルワークをしています。誰かに迷惑をかけたくないので、生活保護から抜けることはひとつの目標でしたから」
2年前、非正規職で執拗なパワハラにあって適応障害を発症、自殺願望が抑えられなくなった。適応障害で苦しむとき、次男は高校に入学したばかり。一家の大黒柱として、生活をしなくてはならない。精神科の診断書を片手に福祉事務所に飛び込み、生活保護を受けた。給付額は月12万円。
2カ月前、このままではいけないと仕事を探した。見つかったのはコンビニと駅前の居酒屋のダブルワーク。時給は最低賃金に近い850円、朝晩働いて月14万円前後の収入は確保できそうなメドが経ったのが現在である。
何度も自殺未遂を繰り返した
自宅近くのファミレスで話を聞く。三井さんは席に着くとせきを切ったように話し初めた。一緒に住む次男に対しては、無理して気丈に振る舞う。孤独な生活で吐きだす場所がないようだった。
「私、パニック障害もあるし、適応障害もある。お薬は8種類ぐらい飲んでいます。だから落ち込むと本当に危険な状態になって、何度も自殺未遂はしていますし。でも、もう死のうとは思わない。理由は当たり前ですが、子供がいるから。ただ前の夫と一緒に住んでいるときは、薬飲んで救急車とか、首吊って落ちたり、いっぱいした。また、そういう状態に戻ったら怖い。息子が社会人になるまで、最低でももうちょっとは頑張らないといけないなって。1年半前に生活保護をもらって、少し精神的には楽になった。精神的には少し立ち直れたので、今は死のうとは思わない。けど、やっぱり落ち込んだときは、ツラくてツラくてしょうがない……」
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