【2023年12月11日16時40分追記】関係者に配慮し、写真とキャプションを修正しました。
「んああ、えんああぁ、んぁああ……」
神奈川県某市。足元がおぼつかなく、マスク姿で現れた山内里美さん(48歳、仮名)が何を言っているのか、わからなかった。聞き耳を立てて近づいたが、わからない。彼女はカバンからメモ帳とペンを取り出す。「20分後には薬が効くと思うのでしゃべることができます。申し訳ありません」と書いてあった。達筆だった。
精神障害と向精神薬の副作用、脳脊髄液減少症に長年苦しむ。この4年間は働くどころか、普通の日常生活も送れない。普段は自宅から出ず、一日中横になって療養する。服装はジャージ、首にはコルセット。自宅から徒歩5分程度のここにも、なんとかやって来たという状態だ。普段は動けないが、服薬すると一時的に回復し、しゃべることができるという。
バツ1のシングルマザーで、子どもは男1人、女2人。現在は近くの古い団地に21歳の長男、19歳の次女と3人で暮らす。彼女と次女は、生活保護を受給している。薬が効くまでの間、持参してもらった生活保護の受給証明書、障害基礎年金の振込通知書、昔の写真を見せてもらった。若干色あせた写真には、華やかで美しい笑顔の女性が写る。22年前、26歳のときの山内さんだ。当時はシングルマザーになり、水商売をしていた。彼女は池袋の有名店の人気キャバ嬢だったという。
華やかな22年前、そして歩くことすらままならず、筆談する現在の弱り切った姿。壮絶なギャップに絶句した。
生活保護課の紹介で精神科を受診
「私は精神病院に精神障害者にさせられたと思っています。まさか自分がそうなると思わなかったですが、現実にそういうことがあるのです」
20分後、声が出た。マスク越し、小さな声でゆっくりとした口調。健康だった頃は品のある女性だったろう、と思った。
「精神科に最初に行ったのは12年前です。当時、横浜の訪問介護事業所の社員だったのですが、小さな子どもを3人も抱えた状態で何年間も長時間労働せざるをえず、無理して脳脊髄液減少症になってしまいました。脳脊髄液が漏れて、頭痛やめまいが止まらなくなる病気。とても働けません。それに倦怠感とか眠れないとか、いろいろ重なって生活保護を受けました」
市役所の生活保護課の紹介で、指定された精神病院で受診する。
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