28歳、暴力夫から逃げた「一児の母」の間一髪 保護施設シェルターに命を救われた

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新生児に向かって「さっきから何回泣いてんだよ!」と叫び、高野さんには「早く泣きやませろよ!」と怒鳴る。家事は完璧にこなさないと「死ね」と罵られた。そんな夫はというと、家事をいっさいやらず、ゲームに明け暮れる日々。

さらに事件が起こる。

「突然、夫は私の背中に包丁を突きつけて、『お前死ねよ』『お前みたいなのはすぐに殺せる』と言ってきました。原因は、お義父さんからいただいた目覚まし時計を私が誤って床に落としてしまったこと。時計の針が少し鈍くなってしまったのを見て、夫は逆上して包丁を持ち出したんです」

「死んだほうが楽になれる」と本気で思った

もう、疲れた。未来に希望が持てない。死んだほうが楽になれる、と高野さんは自殺を考えるようになった。

「ただ、夫が悪いとは思っていませんでした。私は生きている価値がないから、いなくなればいいんだ、消えてしまえばいいんだ、と思っていました」

ただ一つ。もし本当に死んだら、旦那は「死ね」と言ったことを後悔してくれるだろうか――。そんな思いで頭がいっぱいになった。

モラハラに暴力。通常だったら友人か親に相談をするところだが、高野さんは誰にも相談をしていない。大阪の友人とは疎遠になっていたし、親との関係もしっくりいっていなかった。もともと親に褒められたことがない子どもだった高野さん。自分の意見をくみ取ってもらえず、いつも否定され、親の一方的な命令で育った。苦い思いが長かったせいか、大人になった今も積極的に連絡を取る気持ちにはなれていない。

クローゼットで首をくくれないか、と自殺方法に悩んだ。

「クローゼットの荷物棚だったらいけるんじゃないかと思って。いざとなったらこれにしようと思っていました」

そして、子どもはどうしようかと迷っていた。

「子どもも一緒に……と思っていました。でも、子どもには子どもの人生があるし、私がいなくても生きようと思えば生きられるだろう、と考え直したりして」

そんなときに、偶然、区の赤ちゃん相談員の家庭訪問があった。赤ちゃんがいる家庭を順番に回っていき、赤ちゃんとママの様子をみていくものなのだが、そこで相談員はちょっとおかしいことに気がつく。4カ月の赤ちゃんがいながら、部屋が片付きすぎていることを異様に思ったのだ。

相談員は高野さんに「部屋が片付きすぎていますね」と声をかけた。「小さい子がいるのに無理していませんか」と言い、「相談に来ませんか?」と誘ってくれたのだ。ようやく第三者が介入し、この状況が「おかしい」ことに気がついた。

ここから事態は好転していくことになる。

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