佐々木:おっしゃるとおりです。われわれは塩野さんと戦わなければいけないということですよね。実際、「東洋経済オンライン」上では一緒に戦っていますし。
塩野:読者からしたら、「東洋経済オンライン」のどの記事もフラットなんですよ。「これはジャーナリストの記事」「これはコンサルタントの記事」というふうには見ない。ジャーナリストがフラット化したのです。
佐々木:そうですね。
塩野:ウェブメディアの時代になって、動画埋め込み当たり前、フラッシュムービー当たり前、すべてが簡単に軽くなってしまった世界においては、佐々木さんが著書で書かれていたように、ジャーナリストとしてどの媒体でどう出力するかが重要になってくると思います。活字から自由になって、動画や音声、ベストな表現手段でアウトプットすることが当たり前になりますよね。
新しい付加価値は「まとめ」と説明能力
佐々木:そうすると、分析力では学者やコンサルタントの方になかなか勝てないじゃないですか。
塩野:そうですね。
佐々木:そこで新しい付加価値って何でしょうか。もちろん媒体を横断的に使えるという能力もあると思いますが。
塩野:ひとつは、オシャレな言葉でいうと「キュレーション(収集・分類)能力」。あとは何らかの「1次フィルタリング能力」や「まとめ能力」でしょうね。
これだけネットに情報があふれていて、ワンクリックでアクセスできるのに、学生と就活の話なんかをしていると、あまりにもモノを知らなくてビックリすることがあるんですよ。社会人だったら絶対に知っているようなことをまったく知らない。
たとえば、ある東大生が「僕、民間に行きたいんですよ」と言うので、「どういうところに行くの?」と聞くと、「プラントとかインフラに興味があります」と。「じゃあ、日揮とかは?」と言ったら、「すいません、それどんな会社ですか」って(笑)。
佐々木:知っていて当然のことを知らない。
塩野:ええ。そういうことはよくあるのです。少し前に私が連載で書いた「弁護士はこれから食えない」みたいな話は、普通に需給の問題で、人があふれれば選別されるわけです。「米国でそういうことが実際に起きたよね」と、ロースクールに行こうとしている学生に話すと、「そうなんですか!」と驚かれたり。
そういう意味では、まだまだ「おまとめ」と説明をする必要があります。
佐々木:その「おまとめ」は、わかりやすさがすごく重要なんでしょうね。難しいものをわかりやすくして整理するというような。
塩野:はい。各カテゴリーにおける“池上彰さん”が必要です。
佐々木:そうすると、学者は何か新しいものを発見する、コンサルは実務を解決するとして、ジャーナリストはその仲介役になるということですね。
塩野:そうですね。ただフラットな世界におけるジャーナリストの敵は、NAVERまとめやnanapiにもなってきますし、メタなパッケージングをするGunosyやAI(人工知能)技術もライバルでしょう。AIが記者クラブでレク受けたら怖いですよ。
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