メディアを襲う"破壊的イノベーション" 読者・視聴者を3分の1失ったアメリカの報道機関
「稼ぐだけでは十分じゃない。成長がなければ」
「すべてのビジネスは、永遠に若くなくてはならない。顧客の年齢層があんたたちと一緒に年取っていくようでは、企業はウルワース(米国初のディスカウントストアだったが現在は消滅)だ」
「ルール、ナンバーワンはこうだ。(物事を)つまらないと思うな」
9月3、4日の両日、あと1カ月で米紙ワシントン・ポストのオーナーとなるジェフ・ベゾス氏(アマゾン創業者兼最高経営責任者=CEO)が、ポストを初めて訪問。記者や編集者とのミーティングに臨み、ポスト経営のビジョンを語った。
ポスト記者は早速ミーティングについて報じた。ベゾス氏は、ポストの成功は、新聞でニュースを何本も読む癖を、読者につけることができるかにかかっていると何度も強調。あわせて、デジタル版では、複数の記事を集めた「バンドル(束)」を提供し、それに課金するという案も示した。たまにウェブサイトに来て、1本しか記事を読まない読者は、購読料を払うつもりはないからだ。
「僕らは皆、どうしたら変われるのか、何がポストの次の黄金時代を生むのか、広い視野で考えなくてはならない」(ベゾス氏)。
同氏が生まれる前の1963年からポストで働くベテラン記者が、質問した。
「国内海外にもっと支局を持っていた黄金時代に戻れるのか」
ベゾス氏はこう断じた。
「黄金時代にいくつ支局があったかなんて、知らない。過去に後退することはできない。企業が滅亡する予兆は、過去がどんなによかったとしても、それを美化することだ」
ポスト記者らとのやり取りで、ベゾス氏は間違いなく新聞業界の「ディスラプター(disruptor)=破壊者」であることをみせつけた。
新聞ビジネスの知識はなく、「破壊者」として登場したベゾス氏が、「ホワイト・ナイト(救済者)」であるかどうかはまったく不透明だ。しかし、米国では、名門新聞社が、破壊者にさえ「身売り」する時代が到来した。米国の報道機関はどこまでの窮状にあえいでいるのか。
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