メディアを襲う"破壊的イノベーション" 読者・視聴者を3分の1失ったアメリカの報道機関

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読まれる記事、読まれない記事

では、どうすれば「破壊的イノベーション」を、報道機関で起こせるのか。

「多くの編集局の戦略が、報道が成り立つ理由として、主な読者・視聴者層、価格帯、販路という画一的な構造に頼りすぎている」とスコック氏。その代わり、生き残りのために「なすべきこと」を3つの課題に集中するべきだとする。

1)読者・視聴者は、どんなことをしたいと思っているのか。

2)読者・視聴者がしたいと思っていることを満足させるには、どんな社員と経営が必要か。

3)読者・視聴者がしたいと思っていることを届ける手段は、何が最適か。

たとえば、スコック氏は、業界で「ベタ記事」と呼ばれる短い記事や、主張や意見が入らない記事が読まれなくなる「中抜け」現象が起きていると指摘する。

「速報あるいは長めの調査報道の記事などは、よく読まれている。しかし、ローカルの自分が読みたい記事はグーグルで探せる。今は、新聞を端から端まで読んだり、夕方のニュースを30分間ずっと見る人はいない」。

スコック氏は、ニュースの消費が劇的に変化したと強調する。「インターネット技術のおかげで、読者が特定の記事や、お気に入りのカテゴリーだけ読むことができるようになった。こうした消費の変化から収入を得るには、新しい販路について、クリエイティブに考えなくてはならない」。

こうした消費者の動向が、ベゾス氏が冒頭の発言で、ニュースの新たな「バンドル」を検討している背景であるのは間違いない。

論文は、非営利法人(NPO)報道機関として成功しているテキサス・トリビューン(テキサス州オースティン)が、地元政治家などを招いて年間60ものイベントを開催し、企業スポンサーや入場料で90万ドル、年間収入の5分の1を得る見込みである例を紹介。また、ダラス・モーニング・ニューズ(同州ダラス)は、あえて印刷技術に投資をし、印刷事業で高収益を上げている例も挙げた。

論文はこう訴える。

「ひとつのビジネスモデルがどの企業にもあてはまるとは言えない。ただ、経営者は、現在ある資産をどうキャッシュに変えていけるのか、考えるべきだ。この新世界では、起業家精神を持って経営にあたらなければ、生き残れない」

津山 恵子 ジャーナリスト

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つやま けいこ / Keiko Tsuyma

東京生まれ。共同通信社経済部記者として、通信、ハイテク、メディア業界を中心に取材。2003年、ビジネスニュース特派員として、ニューヨーク勤務。 06年、ニューヨークを拠点にフリーランスに転向。08年米大統領選挙で、オバマ大統領候補を予備選挙から大統領就任まで取材し、『AERA』に執筆した。米国の経済、政治について『AERA』ほか、「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」「HEAPS」に執筆。著書に『モバイルシフト 「スマホ×ソーシャル」ビジネス新戦略』(アスキーメディアワークス)など。X(旧ツイッター)はこちら

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