メディアを襲う"破壊的イノベーション" 読者・視聴者を3分の1失ったアメリカの報道機関
報道機関はこの状況に、どう対応していけばよいのか。将来、成長はあるのか。ベゾス氏がワシントン・ポスト記者らに語ったビジョンの拠り所となる論文がある。
ハーバード大ビジネス・スクール教授、クレイトン・クリステンセン氏は、アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏や多国籍企業に大きな影響を与えてきた経営理論家だ。同教授のキーワードは「破壊的イノベーション(disruptive innovation)」。同教授は、企業の成長には「破壊的イノベーション」が必要だという理論を、初めてメディア企業にもあてはめた論文「破壊者たれ(Be The Disruptor)」を昨年秋に共著で出した。
「破壊者たれ」を同教授と執筆し、同大2012年度特別研究員だったデビッド・スコック氏に、グーグル・ハングアウトを使ってインタビューした。同氏はジャーナリストで、現在はニュースサイト「グローバル・ニューズ」(カナダ・トロント)のディレクターだ。
破壊者とはメディア業界にとって何なのか
クリステンセン教授は、論文で、過去の例として、トヨタ自動車など日本の自動車メーカーを挙げた。ローエンドの小型自動車からスタートして存在感を増し、現在は世界的大企業となった「破壊者」だ。また、米IBMのように、コンピュータ業界の競争が激しくなった際、パソコン事業を売却し、システム・コンサルティング専門として、自らを変革して生き残った例も「破壊者」だという。
「クリステンセン教授によると、ジャーナリズムは利益追求だけでなく、公共サービス的な側面も持つ。だから報道機関に『破壊理論』があてはまるかどうか議論したが、当然、適用できるという結論に至った。ハフィントン・ポストやバズフィード(BuzzFeed)は、新手の破壊者だ」(スコック氏)
ハフィントン・ポストは、当初はブログだけで、かわいい猫のビデオなどもアップし、「完璧ではなくても読むに値すればいい」(同氏)という存在だった。しかし、トヨタと同様、今は記事を高品質なものに拡大し、昨年はジャーナリズムで最高の栄誉であるピュリッツアー賞さえ獲得した。
一方で、有力紙ニューヨーク・タイムズでも「破壊」が起きているという。新聞業界の構造不況と、ハフィントン・ポストのような破壊者の登場に対応し、タイムズはビデオやデータ・ジャーナリズムなどさらに深いサービスを拡大している。これも「自己破壊のプロセス」だとスコック氏は語る。
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