日本のメディアには、金儲けのプロがいない 田端信太郎氏と考えるウェブメディアの未来(下)
※ インタビュー(上):5年後、メディアは稼げるか?
※ インタビュー(中):「勘違いジャーナリスト」たちにモノ申す
勝間和代さんから学べること
――欧米のメディア界では、外部からビジネスのプロがメディア企業に入ってきたりもしますが、日本の場合は、記者・編集出身者がそのまま経営をやることがほとんどです。ビジネスのプロが入ってくる余地がほとんどありません。
外部からのビジネスのプロの登用はある程度は行なったほうがいいですよね。そのほうがみんなハッピーだと思います。だって、そうでないと、「武士は食わねど高楊枝」が成り立ちませんから。収益性に裏打ちされていないと、そんなにプライドも高くもてないでしょうし。
ただ、何でもかんでもビジネスライクに、株主目線、金融市場目線でするのがいいとは必ずしも思わない。メディアには、最後の最後はどこかで非合理的なこだわりをもつことが、長期的には経済合理的に振る舞えるというパラドックスがつねにある。目の前の業績だけを見て経営していては、たぶん株主のためにもならないと思う。
――今後、マネタイズという点では、有料課金がテーマになってきますが、ただ単にコンテンツの力を高めるだけでは、課金するのは難しいはずです。テクノロジーや異業種の力を借りながら、コンテンツ+αのサービスやマーケティングを強化しなければなりません。
ただ、自戒も込めていうと、日本のメディア企業はそのあたりの工夫がなさすぎます。マーケティング的なノウハウと、コンテンツづくりのノウハウをうまく融合できたら、有料課金にもつながるのではと期待しているのですが、甘すぎますか?
その考えは間違ってないと思いますよ。甘くないでしょうけど、トライしていくしかないですね。
結局、課金でいうと、比較参照のポイントをどこに置くかだと思っています。たとえば、ウェブサービスを勝間和代さんの勝間塾のように「知のスポーツクラブ」的に定義すれば、比較対象がスポーツクラブの会費である月額8000円ぐらいになるわけです。勝間塾は月額4800円ですけど、やっぱりマーケティングがうまいなと思いますよね。
これを、メルマガといってしまった瞬間に、相場が800円に落ちてしまう。「知のスポーツクラブ」と定義して、その会報としてメルマガを送り、定期的に会員で集まるイベントをつけることによって、単なるメルマガではなくなる。実質的にはメルマガとそんなに変わらないかもしれないですけど、ラベルを張り替えている。