日本のメディアには、金儲けのプロがいない 田端信太郎氏と考えるウェブメディアの未来(下)
――幻想を抱かせるというか、相場観を変える工夫が必要ということですね。
文脈を変える、比較対象を変えるということです。農業でも今は6次産業化がブームになっていますけど、それと同じような意味です。たとえば、エコツーリズムという切り口であれば、都会から客を呼んで来て、稲刈りをさせて、労働力として使って、宿代までとれて、その上、来たお客側はよかったよかったと思って帰ってくれる。それなら、みながハッピーなわけじゃないですか。だからメディア企業も、コンテンツをコンテンツのまま提供するだけではマネタイズはなかなか難しいですよ。
米国メディアにあって、日本メディアにないもの
――結局、マネタイズの成功例を創るには、トライ&エラーをひたすら繰り返すしかないですね。欧米メディア業界には、トライ&エラーのサンプルがいっぱいあるので、その中から日本に合う例を探し出してきて、実際に試してみたらいいと思うんですけど。
僕がアメリカでいちばんうらやましくて、いつかはやりたいなと思うのは、名のあるピュアなオンラインメディアを創ること。ハフィントン・ポストにしても、テッククランチ(2005年にシリコンバレーに誕生したテクノロジーメディア)にしても、純粋なオンラインメディアとして、名誉のある地位を築いている。それは画期的なことですよ。日本から見たら実にうらやましくて、見習わないといけないことだと思っています。日本には、ハフィントンやテッククランチみたいなものもないですよね。
――今まで紙とネットを両方やってきた生きのいい20代、30代ぐらいの人が集まって、そうしたメディアを創ることはできないでしょうか?
ゼロスタートでなら、全然ありだと思いますよ。
――メディアは、ブランドビジネスなので、新しいものがなかなか成功しにくいともいわれます。ただ、今という時代の変わり目であれば、既存のブランドがなくても、成功する可能性はあると思いますか。
あると思いますよ。そうでなかったら、僕はこの業界辞めますよ(笑)。いる意味ないですよ。
――既存のメディアを中から変えて、ウェブメディアを成功させるのもすごいことですが、やっぱり、既存のブランドに頼らないオンラインメディアを立ち上げて成功させたほうが、世の中へのインパクトは大きいでしょうか?
ええ、僕はそう思います。コンデナストを辞めたのもそれが理由です。守る側より、攻める側にいるほうが面白いでしょ。