日本のメディアには、金儲けのプロがいない 田端信太郎氏と考えるウェブメディアの未来(下)

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みなが憧れる、かっこいいオンラインメディアを

――ウェブメディアを運営する上で、紙メディアでの経験は生きますか?

コンデナストでの2年間は個人としてはすごくいい経験になった。外から見ていると、「コンデナストにはこんなによいコンテンツがいっぱいあるのだから、デジタルに使えばいいのに。ただ眠らせるのは本当にもったいないなあ」と思っていたんですけど、入ってみると、できないにはできないなりの理由があることがよくわかった。権利面や紙とのカニバリの問題も含めていろいろあるわけです。

だから、以前からある業界構造に対して、ただ「バカだ、保守的だ、頭が硬い、腰が重い」と批判することでは物事は前に進まなくて、普通に真面目にサラリーマン同士が集まって会議をした結果としてこうなってしまっているんだなぁ、という力学をある程度踏まえていくことも重要です。これは実際にそういう環境にインサイダーとして入ってみないとわからない。それを外からバカだバカだといっているのは、安全地帯から石を投げているようなものですよ。

――私が最近痛感しているのは、優秀なジャーナリスト、広告営業、テクノロジスト、経営人材が、「ここで働きたい」と心から思えるようなウェブメディアを創らないと、日本のメディアは変わらないということです。何か、かっこいい奴らが働いているウェブメディアがあって、クールで周りから尊敬されている。しかも、給料も悪くないという場所を創らないといけません。

それなりに個人として実績をもっている人間が、「よーいドン」で10人くらい同世代で集まってメディアを始めたら、そういうウェブメディアができるのかもしれない。

ただし、そこでもっているブランドが組織的なものに昇華して、世代を超えて受け継がれていくイメージがどうにも湧かない。あくまでオーケストラというよりは、有名ミュージシャン同士による“夢のユニット結成”みたいな感じがする。3年ぐらいは、コンサートを開いたり、アルバムを出したりして続くでしょうけど、その後は、よくありがちな音楽性の違いとかで、だんだん分裂してしまうような気がして(笑)。しかし一方で、それぐらい我の強い人たちが集まらないと、メディアビジネスとして成立しなかったりするので、そこにモヤモヤ感がある。

今のソーシャルメディアの時代には、個人がブランド化されるスピードのほうが組織としてブランド化されるスピードよりも速い。するとどうしても、屋号としてのブランドに昇華されにくいところがすごくあるなと思う。

そうしたウェブメディアをゼロベースで創るビジネスプランを書いても、そこにおカネがつくかはわからない。パトロンにおカネをもらう形ではなく、純粋な投資としておカネを引き出せるかはわからない。しかし、そうしたメディアが、今の世の中に必要とされているということは間違いないと思いますよ。

(撮影:尾形文繁)

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