バイト採用に苦戦する会社の大いなる勘違い 「正社員登用あり」と連呼してもムダだ

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そもそも「正社員登用あり」というのは、非正規社員にとって魅力的であると会社側は考える傾向があります。その理由は単純で、非正規社員は正社員なりたいはず……と思っているから。詳しくは後述しますが、その状況は変わりつつあるようです。必ずしも正社員になりたい人ばかりではなく、有効な条件とは必ずしも言えないのです。

ちなみに非正規社員から正社員登用の実績がある会社は全体のうち約半数。正社員登用が多い会社は、制度として仕組みが確立している傾向がありそうです。(労働経済動向調査・平成29年2月より)

どのような過程を経て正社員に登用されるのか

では非正規社員が、どのような過程を経て正社員に登用されることが決まるのか? 企業によって異なりますが、一定の勤続年数を経て、正社員と同等(あるいはそれ以上)の成果ややる気があると会社(ないしは直属の上司)が判断。「正社員にならないか?」と声がかかり、面接や試験を経て正社員への道が開かれることになります。

ただ、登用の基準はかなり曖昧。職場における正社員の充足状況で変わる傾向があります。社内で正社員が不足している状況では登用の基準が下がり、正社員になる非正規社員が続々と出てくる状況。ところが、正社員が充分に足りてくると登用の門戸は厳しくなります。つまり、正社員登用ありと書かれていても、時期によりなれる可能性はかなりばらつきがあり、不明ということ。「正社員登用あり」の一言をあてにして応募したら、痛い目をみることがあるかもしれないのです。

取材した広告代理店で営業職をしているSさんは、正社員登用があると採用条件に書かれた求人情報から応募。応募した時点では派遣社員としてコールセンターに勤務していました。面接の際、正社員登用の可能性を質問したところ、「当社では昨年だけで20人以上の正社員登用が行われました」と説明がなされました。Sさんは結婚を考えており、将来の安定を望んでいたので正社員登用があるのなら、最初は非正規社員でもいいと応募したのでした。そして、Sさんは契約社員として営業職に採用されましたが、3年が経過しても正社員登用される気配がありません。会社の業績は順調とはいえず、この2年で正社員登用された人は1人もいません。Sさんは不信感を抱きながら会社を辞めてしまいました。

こうした残念なケースでは、会社も個人も不幸な状態になります。正社員登用に関して、採用でアピールするのであれば、それなりに門戸を開いておいてほしいものです。では、門戸を開いて正社員登用を行えば、アルバイト・パートの募集に効果的か? そうともいえない状態になってきているようです。

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