「やられたらやり返す、倍返し、いや、十倍返しだ!!」
や~これが半沢直樹か、気持ちええな~、なんか聞いてたらすーっとするというか、ただしほんまにこんな奴いたら、クビか警察沙汰か、病院送りやろな・・・。
さて、ドラマ半沢直樹が42%の平成最高視聴率を記録し、関西では瞬間風速50%を超えたらしい。今やどこを見渡しても半沢直樹の話題でいっぱいで、ビジネス誌のトップランクを飾るコラムや記事も、半沢直樹ネタで埋め尽くされている。
この“半沢直樹ネタを書けばアクセスを稼げる”というマスコミ関係者の皆さんの安易な発想に、私は辟易としている。そこで、われらが「東洋経済オンライン」も“半沢ネタ”を打ち切りにする契機にすべく、最後にグローバルエリートが半沢直樹ネタを締めさせていただこう。
半沢直樹の芸術的な世界観
まず私が好きだったのが、あの若干“イってしまっている表情”、張りのある声、そしてバンカーたちの悪どそーな表情。あの苦悩や屈辱や葛藤が入り混じった表情の一つ一つが織りなす絶妙な“間”が日本の“間”を楽しむ文化にマッチしている。
土壇場で身内の裏切りが重なり二転三転した手に汗握る展開は、野球で言うところの9回ツーアウト、ツーストライクスリーボール、3点差で走者三人で一打逆転、みたいな緊張感を毎回巧みに演出していた。これは“間”を重視する野球ファンが多い日本のなかでは、文化的にピタリとはまったドラマでもあろう。
“直樹”という名前も彼の真っ直ぐなイメージを上手く表しており、趣味が剣道というのも半沢直樹氏のキャラクターを効果的に強めていた。また半沢氏が一人情熱的に独演して“お決まりの台詞“を叫ぶシーンは歌舞伎の型のような様式美を感じさせた。そこに”つかこうへい氏“の演劇に見られた“口上”を連想したのも私だけではあるまい。
半沢直樹氏のほとばしる感情の爆発が、日頃は忍従を強いられ、我慢と忍耐と建て前に押しつぶされている現代人の心を解放している。また半沢直樹がキャリア的に窮地に陥っても、自宅に帰れば、かわいい奥さんが常に自分の味方として励ましてくれるが、これも疲れたサラリーマンの永遠の願望だ。
こういった“現実にはありえない理想を希求する強力な感情”が半沢直樹氏の表情、声の張り、セリフの一つ一つとシンクロし、強烈な世界観を演出するのに成功していたといえよう。
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