戦後も一時期は、前述のとおり、転職が当たり前の時代に戻りましたが、1950年からの日本経済の拡大発展、やがては高度経済成長によって、変化が始まります。戦時中にも行った労働者の囲い込みを、今度は国ではなく大企業が主体となって行ったのです。
終身雇用で定年まで面倒を見ますよ、年功序列で年々給料と地位が上がりますよ、そして、企業内労働組合で「会社は家、社員は家族」という形で面倒を見ますよ、と労働者を誘いました。
そのような経緯を考えると、アベグレンが指摘した三種の神器は、むしろ、日本的ではなく、日本においてはむしろ、特殊で異例な3項目といえると思います。
もともと日本人はジョブホッピングのDNAを持っている
いま、日本的経営を見直そう、働き方を見直そうという風潮が強いようですが、見直すまでもなく、もともと日本人はジョブホッピングのDNAを持っていると思います。ですから放っておいても、これから多くの人材が、とりわけ、若い人たちが転職をするようになると思います。
故・山本七平氏は、日本の資本主義の系譜は、武士から出家した江戸時代初期の曹洞宗の僧侶・鈴木正三 → 石田梅岩 → 渋沢栄一 → 松下幸之助であり、彼らは仕事を人間的成長の場と考えたと指摘しています。ですから、1つの会社、1つの職場でこれ以上の人間的成長が望めないと感じると、さらなる自己向上を求めて転職をすればいいのです。
これからの時代を考えると、自己向上を目指す日本的転職だけではなく、さまざまな転職が増えていくことと思います。現在進行している第4次産業革命によって、多くの会社が時代に取り残されていく可能性があります。にもかかわらず会社の経営陣が今までの成功体験を繰り返すならば、社員の人たちは、どんどんと転職するようになるでしょう。
これまでなら、そこを我慢、辛抱して、ストレスを抱えながらでも勤め続けるのが普通でしたが、これからは変わっていきます。自分の会社が第4次産業革命による変化に追いついていけない可能性があるならば、早々に見切りをつけるべきです。少々のリスクは覚悟のうえで、どんどん転職して、さまざまな経験をしたほうがいいでしょう。
私は、相当以前から「会社駅舎論」を主張し、拙著にも書き、講演でも話をしてきました。
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