志のあるおカネで、ニッポンを元気にしたい セゾン投信中野氏×ミュージックセキュリティーズ小松氏

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中野 それが今は、酒蔵ファンドまで運営している。

小松 ミュージシャンというのは、自分なりのこだわりを持って音楽をやっている。酒蔵もそれと同じです。自分が作っているお酒に対して、非常に強いこだわりを持っている。それを飲み手に伝えようと努力を繰り返していて、実際にファンもついている。

ところが、酒蔵は経営を維持するのに必要な資金調達の手段が非常に限られていて、資金繰りの悪化から倒産するところが増えていました。そこで、匿名組合方式で資金を調達しようと考え、純米酒ファンドを立ち上げたのが2007年のことです。

小口投資でも、リターンの実績が重要

なかの はるひろ 中野 晴啓 セゾン投信代表取締役社長。1987年西武クレジット(現クレディセゾン)入社。債券のポートフォリオ運用を手がけた後、投資顧問事業を立上げ海外契約資産等の運用助言を行う。2006年セゾン投信設立。 

中野 確か初めてお会いしたのもそのころでしたね。私のセミナーが鳥取で開かれたとき、小松さんと一緒に鳥取の酒蔵にお邪魔したことを思い出しました。ただ、そのときは正直、どうやっておカネを集めるのかわかりませんでした。

その頃の私たちは、セゾン投信で投資信託を設定・運用し、少しずつ運用資産が集まってきた頃でしたが、投資信託の場合、金銭的なリターンに対する期待があるから、おカネが集まってくるわけです。でも、純米酒ファンドは、どうも金銭的なリターンに期待している投資家がおカネを出しているわけではない。「共感」が大きなテーマになっているようには感じていましたが、本当にそれだけでお金が集まるのか、疑問でした。

小松 だからこそ、まずはトラックレコードをしっかり出すことが大事だと思っているのです。匿名組合の募集を行い、おカネを集めたらそれを事業に投入する。で、順調に事業が広がったら、出資してくれた投資家にきちんと金銭的なリターンをお返しする。大事なのは、その積み重ねです。多少なりともリターンがあれば、投資家の人たちもおカネを投資しやすくなる。

それとともに、われわれが投資してほしいと思っている会社と一緒にセミナーも開催します。そして、投資家の方々と直接、お話をしてもらいます。そうすれば、投資家の方々も納得のうえで投資することになります。弊社のファンドに限った話ではありませんが、やはり投資する際には、投資家に、どういうものに投資しているのかということを、きちっと理解してもらうことが大切です。

198本のファンドのうち、マイナス償還は16本

中野 実際、どのくらいのリターンが得られるものなのですか?

小松 今まで198本のファンドを立ち上げました。このうち79本が償還済みです。全ファンドのリターンについては、弊社のホームページで公開してありますので、興味のある方は一度、ご覧になっていただければと思います。ちなみに償還されたファンドのうち、当初の投資金額を割り込んでしまったファンドは16本。残りはプラスマイナスゼロか、もしくはプラスでの償還です。リターンもファンドによってバラバラで、中には50%のプラスとなっているファンドもあれば、逆に50%のマイナスになったファンドもあります。

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