金融専攻の卒業生に私が送るメッセージ--ロバート・J・シラー 米イェール大学経済学部教授
今の時期、米国では卒業式が行われる。金融業界や、保険・会計・法律・経営分野での関連したキャリアを志す人たちに私から次のメッセージを贈りたい。
卒業後、金融業界を選んだ君たちの幸運を祈る。君たちはキャリアの途上で、ウォール街や関連の組織から必要とされるだろう。金融理論・経済学・数学・統計学で行った演習が役に立つことは間違いない。だが、歴史・哲学・文学の授業も同じように大切になる。なぜなら、適切な道具を手にすることだけでなく、金融が持っている目的や社会目標を見失わないこともまた必要不可欠だからだ。
世界経済を大恐慌以来最悪の危機に陥れたとして、金融業界が厳しく批判されていることを君たちは知っている。また金融機関や、その主要顧客である所得上位1%の人たちに対する怒りを感じ取るには、世界で起きた占拠運動に参加したクラスメートの誰かに聞けば済むことだ。
こうした批判の一部は言いすぎだったり、お門違いだったりするかもしれないが、それでも金融機関や金融慣行の改革の必要性を浮き彫りにしている。
これまで金融は、繁栄する市場経済民主主義諸国の中心に位置してきた。だからこそ金融の現在の問題に取り組まなければならない。君たちを待っているのは本当の専門職的な試練であり、それを機会として受け止めるべきなのだ。
若い金融のプロたちは、金融の歴史をよく知り、多様化する社会集団に奉仕するときに金融が本領を発揮することを認識すべきだ。