(第14回)戦略から、組織へ、組織から人へ ─ リーダーシップの磨き方 ─

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 以上に限らないが、ここまで述べてきたように、リーダーシップには様々なスタイルがある。

 個人の資質によって得意とするスタイルは異なるが、一人がいくつものスタイルを身につけることは可能だし、状況に応じて異なるスタイルのリーダーシップを発揮することができる人も多い。
 まずは、自分自身にあったスタイルはどのようなものか考え、実践を通じ磨くことから始めると良いと思う。

 リーダーシップ論の中で私が最も心惹かれる点は、「リーダーシップは経験と学びを通じて、磨くことができる」という考え方だ。
 人は誰もが皆、何らかの資質(才能)を持って生まれてくる。実りの多い人生を送るために、自らが持って生まれた資質を理解し、発揮することは非常に重要だ。しかし、リーダーシップは、生まれ持った才能ではなく、後天的に伸ばすことができる能力だと考えられている。

 1900年代初頭から中頃に至るまで、経営者や役人、団体の長など、実際にリーダーとして活躍した人を対象に、判断力や社交性といったパーソナリティ、身長や体重などの外面的特徴などを中心に、リーダーシップを発揮するために必要な共通の資質に関しての体系的な研究が行われた。
 研究の結果、明らかになったことは、「リーダーシップの発揮にあたって、持って生まれた資質の影響がまったく無いわけではないが、資質だけでは説明がつかない。後天的な要因が大きい」ということだ。
 非常に勇気づけられる研究結果である。
 今のビジネスフィールド(おそらくそれ以外の分野でも)で、求められている「リーダーシップ」は誰でも経験と学びを通じ磨くことができるものだというのだ。

 とはいっても、「リーダーシップを発揮する機会なんてないしなぁ」とお考えの読者もいることだろう。
 決して、そんなことはない。

 一日に与えられた時間は誰も同じ24時間であり、リーダーシップは意識することで伸ばすことができる能力であるにもかかわらず、日々与えられている機会に気付かないのが現状なのだ。

 リーダーとよべる役割についていない人であっても、集団に属しているのであれば、指示を出したり、皆の力を見抜き伸ばしたり、変革の必要性を強く叫び、動くことで、組織をよりよい方向に変えることができるはずだ。
 リーダーシップとは役職や役割によって得られるものではなく、日々の心のあり様によって得ること、磨くことができるものなのだ。

 政治家、経営者、スポーツチームの監督だけに、リーダーシップが求められているのではない。私たちも今いる職場や教室、研究室、家庭をよりよい方向に導くために、日々リーダーシップを求められているという当たり前の事実に気付き、意識してその能力を伸ばす努力をしていくべきだ。
 日々の努力と意志が、組織や社会をよりよい方向に導き、変革するための一歩となる。

福井信英(ふくい・のぶひで)
慶應義塾大学在籍中にジョブウェブと出会い、インターンシップ生として働き始める。
大学卒業と同時に(株)日本エル・シー・エーに就職。経営コンサルタントとして、学校法人のコンサルティングに取り組んだことをきっかけに、2003年3月に(株)ジョブウェブに転職。
現在、新卒事業部の事業部長として、企業の採用活動のコンサルティングや学生を対象とした各種リサーチ、教育研修コンテンツの作成に取り組む。
1977年生まれ。富山県出身。
福井 信英

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