名門校「武蔵」が守り切る「変わらない勇気」

塾歴社会「最後の楽園」の驚くべき実態

そのほか、詳細は割愛するが、見出し的に列挙する。

・英語の授業のはずなのにずっと工作
・入試でミカンが配られて食べちゃった!
・2カ月間ひたすら岩石を削る理科の授業
・生徒が教員に花を持たせる「接待サッカー」
・小惑星探査機「はやぶさ」を生んだ名物部活
・タヌキの糞を拾い続けるという青春
・「ゆとり教育」は「全学校武蔵化計画」!?
・長髪に髭がトレードマークの校長は芸大出身

校内には、雑木林があり小川まで流れている。生徒たちはこんなことを言う。「武蔵生って時間にルーズなんです。それってキャンパスのせいじゃないかと思うんです。川も流れてて、ほのぼのしてて。もうなんか『時間? 何それ?』 みたいな感じになるんですよ」。校則らしい校則はなく、制服もない。

まるで塾歴社会に残された「最後の楽園」のようではないか。

校内には小川が流れ、雑木林もある(写真:学校提供)

共通一次導入の時点で「塾歴社会」の到来を予測

1学年160人程度の小規模校。受験進学校らしからぬおおらかな校風。大学入試対策を無視したかのような重厚な教養主義。にもかかわらず、多い年には86人もの東大合格者を出した。その存在自体が、過熱する受験業界へのアンチテーゼであった。

ところが1990年代以降、東大合格者が減少し始めた。「もはや御三家にあらず」といった批判を受けた。理由には諸説ある。しかし私は「塾歴社会が蔓延していく中での構造的な宿命だったのだ」と考えている。

そのことをいち早く予言していた人がいる。現在の武蔵の校風を築き上げたといわれる大坪秀二・元校長である。私が「塾歴社会」と表現した状況を、共通一次が導入された1979年の時点で、「入試歴社会」という言葉を用いて予見していた。校長の職を退いたのち1987年には、東大合格者79人という実績がありながら次のような危機感を表明している。

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