特に夜の時間帯は、気持ちが敏感になりやすいもの。夜中に打ったメールや書いた手紙の内容をあとで見て、こんなに感情的になっていたのかと自分でびっくりすることはありませんか?
こうした状態を続けていると、自分の負の感情をもてあまし、必要以上に不安になり、心臓がどきどきする、呼吸が浅くなる、冷や汗が出るなどの心身の不調を招くことがあります。そしてしまいには「うつ状態」を引き起こしてしまうこともないとはいえません。明け方に自殺者が多いのは、このことと無関係ではありません。
また、お酒に頼るのも逆効果です。アルコールには確かに、「覚醒水準調節作用」といって、興奮している人には鎮静効果を、抑うつ状態の人には興奮効果を与える作用があります。したがって、気持ちが落ち着かずに眠れないときにアルコールを飲めば、ホッとできて寝つきがよくなる可能性はあるのです。時にはこの効果を利用するのもありだと思いますが、常に眠るためにお酒を飲むことは避けたいところです。
眠るために飲み続ければ深酒になり、睡眠の質を下げ、結果的には良い睡眠がとれません。アルコールは、摂取直後には眠気を催させる一方で、時間が経つと深い眠りを妨げ、中途覚醒を引き起こすことになるなど、睡眠の質を低下させるのです。
眠れないなら、起きてしまうのも1つの手
では、眠れぬ夜にはどうするのが適当なのでしょうか。私は、研修の受講者やクライアントに対して「眠れなくて苦しいなら、部屋を明るくして思い切って起きてしまいましょう」とお話しています。
食事を1〜2回抜いたり、時間をずらしたりしただけでは問題がないように、いくら睡眠負債が問題だからといって、数日眠れなかったことで急激な健康被害があるとは思えません。人間は生命維持のために、絶対に眠らざるを得ないわけですから、「必ずどこかで眠るので大丈夫」「眠くなったら寝る」くらいの、ラクな気持ちを持てるといいなと思います。眠れないことに対し、必要以上に罪悪感にとらわれることはありません。実際、そう思うことで「気が楽になって眠れるようになった」という感想をたくさんいただいています。
もちろん、どうしても寝付きにくい、眠れないことが習慣になってしまっているようであれば、医師に相談して自分に合う薬を処方してもらうことも考えましょう。
適切な睡眠時間には、個人差があります。さらには、年齢や活動量によっても変わってくるので、一概に何時間寝るのがいいとは言えません。朝早く起きてしまい、その後眠れないことに悩んでいる人が、実は十分に睡眠が足りている可能性も高いのです。
また、睡眠負債の健康リスクに関する学説も、今後変わってこないとはいえません。なにしろ、8年くらい前には「睡眠負債は取り戻せる」という真逆の論文が脚光をあびていたのですから。
秋の夜長、眠れなければ本を読んだり、動画を見たり、軽食を取ったり……と誰にも邪魔されない静かなひとときを過ごしてみましょう。気持ちのリセットにも大いに有効かと思います。
健康を害したらどうしようという気持ちが、眠ることへのプレッシャーになり、かえって健康を害してしまうことのないようにしたいですね。
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