ヤクルト石川は、低身長でもなぜ勝てる? “自分の弱さ”と向き合う力

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「チームが勝てばいい」の真意

3カ月ぶりの勝利を飾ってから10日後の8月4日、神宮外苑で練習を終えた石川に、「自分に勝ちがつかなくても、チームが勝てばいい」と話す真意を聞いてみた。

「もちろん、自分に勝ち星をつけたいと思っていますよ。でも、野球はチームプレー。チームあっての自分です。口では『チームが勝てば、これほどうれしいことはない』と言っても、頭では『自分に勝ちがつけば』と思っていますけどね。先発をしている人で、『チームが勝てばいい』と100%思っているピッチャーはいないんじゃないですか。ただ、僕らは小さい頃から集団プレーをしてきているわけです。『自分が、自分が』では長くプレーできません。でも、心の中に『自分が、自分が』という気持ちがゼロの人はいない。『自分が』という気持ちも大事だけど、チームプレーですから。心の隅に、『自分が勝ちたい』というのはもちろんありますけどね」

葛藤の中に、石川の本音が透けて見える。「チームが勝てばいい」という気持ちは、決して建前ではないだろう。組織の勝利に少しでも貢献できれば、たとえ自身に勝ち星がつかなくても、果たした仕事に意味を見出せる。「チームが勝てば」と考えることで、自らに前を向かせようとするメンタルコントロール法なのではないか。言い換えれば、それが根気強くということなのだと思う。

「ひとつ勝ったことで、光が見えたのはあります。シーズンの残りがあるので、全部勝ったら2ケタもいけますからね。最後まであきらめないでやりたい」

こう話していた石川だが、8月8日、15日の試合ではともに勝ち負けつかずで終わり、今季の2ケタ勝利は限りなく難しくなった。

だが、チームはクライマックスシリーズ進出を目指す戦いを続けている。石川自身の状態はなかなか上向かないが、ポストシーズンの舞台へたどり着くには左腕の復調が必要だ。

逆境に立ったときこそ、人の真価は試されると言われる。苦しむエースがどこまで根気強さを見せるのか、最後まで注目したい。

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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