「チームが勝てばいい」の真意
3カ月ぶりの勝利を飾ってから10日後の8月4日、神宮外苑で練習を終えた石川に、「自分に勝ちがつかなくても、チームが勝てばいい」と話す真意を聞いてみた。
「もちろん、自分に勝ち星をつけたいと思っていますよ。でも、野球はチームプレー。チームあっての自分です。口では『チームが勝てば、これほどうれしいことはない』と言っても、頭では『自分に勝ちがつけば』と思っていますけどね。先発をしている人で、『チームが勝てばいい』と100%思っているピッチャーはいないんじゃないですか。ただ、僕らは小さい頃から集団プレーをしてきているわけです。『自分が、自分が』では長くプレーできません。でも、心の中に『自分が、自分が』という気持ちがゼロの人はいない。『自分が』という気持ちも大事だけど、チームプレーですから。心の隅に、『自分が勝ちたい』というのはもちろんありますけどね」
葛藤の中に、石川の本音が透けて見える。「チームが勝てばいい」という気持ちは、決して建前ではないだろう。組織の勝利に少しでも貢献できれば、たとえ自身に勝ち星がつかなくても、果たした仕事に意味を見出せる。「チームが勝てば」と考えることで、自らに前を向かせようとするメンタルコントロール法なのではないか。言い換えれば、それが根気強くということなのだと思う。
「ひとつ勝ったことで、光が見えたのはあります。シーズンの残りがあるので、全部勝ったら2ケタもいけますからね。最後まであきらめないでやりたい」
こう話していた石川だが、8月8日、15日の試合ではともに勝ち負けつかずで終わり、今季の2ケタ勝利は限りなく難しくなった。
だが、チームはクライマックスシリーズ進出を目指す戦いを続けている。石川自身の状態はなかなか上向かないが、ポストシーズンの舞台へたどり着くには左腕の復調が必要だ。
逆境に立ったときこそ、人の真価は試されると言われる。苦しむエースがどこまで根気強さを見せるのか、最後まで注目したい。
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