ヤクルト石川は、低身長でもなぜ勝てる? “自分の弱さ”と向き合う力

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個人成績とチーム成績をどう結びつけるか 

2つ目に必要な心構えで窮地を切り抜けたのは、7月25日に行われた阪神戦の6回だ。1死2塁で4番のマートン、2死1、2塁で打率3割を超える今成亮太を迎えたが、いずれも内野ゴロに打ち取った。試合展開的に、並のピッチャーなら崩れているようなシーンだったが、なぜ石川は粘ることができたのだろうか。

「根気強く、いろんなボールを低めに、両サイドに、って小さな頃からやってきましたからね。低めと両サイドに投げていれば、大崩れはしません。習慣? そうでしょうね。球が速かったら勢いで抑えるピッチングをできるのでしょうけど、僕は速くないので。そんなピッチングをしたこともないですし。基本どおりに、低く、低く、コーナー、コーナーに。根気強くがいちばんです」

主力に故障者が続出し、下位に低迷している今季のヤクルトで、エースの石川は通算12年間のプロ生活で1、2を争う苦しさを味わっている。4月26日の巨人戦で勝利した後、3カ月も勝ち星から見放された。自身の責任で敗れた試合もあるが、味方の援護がないケースや、リリーフが打たれて勝ちが消えたことも少なくなかった。

「自分にムシャクシャもしますよ。今年はそんなに調子が悪い感じもしないですし。いいピッチングをしても、勝ちがつかないこともあります。ときには5、6回に突然、打たれてしまったりね。そうなると、自分の何がよくないのかわからなくなります。チームが勝つと、まだ報われるんですけどね。何とかひとつ勝てば変わると信じて、根気強くやらないと」

7月25日の阪神戦で久々の勝利を手にすると、石川は「この3カ月はきつかった」と正直な心境を吐露した。しかし、その表情は浮かなかった。

「素直には喜べないですね。喉から手が出るほど欲しかった勝利だけど、チームがこういう状況にあるのは、自分が勝てなかったせいでもあるので」

個人の成績とチームの順位をいかに結び付けるかは、悩ましいところである。最高のシナリオは、自身の活躍が組織のプラスにつながることだが、うまくいかない場合はどこまで自己を犠牲にし、チームのために尽くせばいいのか。

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