ヤクルト石川は、低身長でもなぜ勝てる? “自分の弱さ”と向き合う力

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2つの心構え

だが6年目の2007年、壁にぶつかる。シーズン序盤から不振で、中継ぎに配置転換された後、5月に2軍降格。壁を打ち破ろうと、新たにシュートの習得を試みた。

当初、左打者にシュートを投げることにためらいを隠せなかったという。内角に食い込んでいく軌道を描くため、「相手の体や顔に当ててしまうのでは」と最悪な光景が頭をよぎったからだ。どうやって、恐怖心を克服したのだろうか。

「投げていく中で、怖い気持ちは乗り越えていきました。だって、背に腹は変えられませんから。攻めなきゃ、抑えられないわけで。デッドボールになったとしても、わざと当てているわけではないですしね。バッターはレガース、エルボーガードをつけているから、もっと厳しくせめても大丈夫。攻めるのは、こっちの死活問題ですから」

球界屈指の制球力を誇る石川でさえ、「10球のうち、7、8球も思うようなところにいかない」という。だからこそ、必要な心構えが2つある。

ひとつ目は、割り切りだ。

「自分が勝負を決めにいったときや、バッターが打ちにきたときだけ、思ったコースに行けばいいのです」

最初から「狙ったところにピタリと投げられるはずがない」と考えておけば、コントロールミスをしても動揺しない。相川はかつて、小宮山にこんな話をされたことがあるという。

「いくらコントロールがいいと言っても、お前がミットを構えたところに来ると思ったら、それは違うからな」

相川の解釈は、「キャッチャーの意図したボールが来なかった場合、次にどんな配球をするかを考えておけ」というものだ。その論理は投げる側も同じで、自分の狙いどおりにいかなかった球が打たれたとしても、仕方がないと割り切ったほうがいい。頭を切り替え、走者にホームを踏ませなければいい話なのだ。そういう発想を持っておけば、ピンチに備えることができる。

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