球界トップクラスのコントロール
身長167cmは、800人を超えるプロ野球選手の中で4番目の低さだ。左腕を思い切り振っても、ストレートの球速は140kmに到達しない。それでもヤクルトの石川雅規がプロ12年間で110勝以上を積み重ね、エースとして君臨してきたのは、自身の“弱さ”と向き合ってきたからだろう。
「僕は150kmのボールを投げられるわけではありません。でも、技巧派だからこそ、攻めないといけない。心掛けているのは根気強く、低めを突くことですね」
ピッチングにおける「攻める」「逃げる」の定義は、とかく誤解されがちだ。今年の第3回ワールド・ベースボール・クラシックに日本代表として出場し、ヤクルトで石川とバッテリーを組む捕手の相川亮二が言う。
「世間では真っすぐでインコースを突けば、攻めていることになりますよね? でも、そうじゃない。変化球を投げることが、かわすということでもありません。僕の意識では、自分の得意のボールを投げ込むことが攻めている投球です」
石川の武器は、球界トップクラスのコントロールだ。テレビのプロ野球中継ではストライクゾーンを縦と横に9分割した図で示されることがあるが、実際にそこまで投げ分けることのできる投手は皆無に近い。“精密機械”や“和製マダックス”と言われた小宮山悟(元ロッテ)でさえ、制球できるのは高低、左右の4分割だったという。
相川が続ける。
「4分割に投げ分けることができれば、すごいですよ。石川は、そこは外さないピッチャー。バッターの特徴をつかみながら、四隅に投げることができます。ここという勝負どころのコントロールは、うちではトップクラスですね。真っすぐも変化球も、すべての球種を勝負球にできるピッチャーです」
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