ヤクルト石川は、低身長でもなぜ勝てる? “自分の弱さ”と向き合う力

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父からかけられた決定的な言葉

石川が球界屈指の制球力を持つまでに至ったのは、裏を返せばスピードボールを投げられなかったからでもある。生まれたときの体重は1800gしかなく、小中学校ともにクラスで最も身長が低かった。速いボールを投げられないことがコンプレックスで、中学時代はよく牛乳を飲み、通販で購入したぶら下がり健康器で身長を伸ばそうとしたが、効果は今ひとつだった。

進学した秋田商業高校ではよく走ることで体力を増やし、帰宅後は父親とのキャッチボールでコントロールを磨いた。地道な努力を続けながら、石川はずっと考え続けた。小さな体の自分が、どうすれば大きな打者を打ち取ることができるだろうか、と。

そんな折、父親にかけられた言葉がコペルニクス的転回になる。

「球が速くなくても、バッターを抑えられるんだぞ」

ピッチャーが打者をアウトにするために重要なのは、いかにタイミングを外すかだ。確かに150kmのスピードボールに振り遅れるバッターは多いが、遅いカーブやチェンジアップを織り交ぜて、130km台のストレートで詰まらせる投手もいる。また、内角を果敢に攻めた後に外角へ沈むボールを投げれば、バットの芯でとらえるのは容易ではない。要は打者との駆け引きのうえで、いかにリズムを狂わせるか、なのだ。

現在、石川の“女房役”を務める相川は、リードする際にこんな意識をしている。

「石川は球が速くないので、コントロール、緩急が重要になります。緩急を使いながら、いかに真っすぐを生かすか。石川の真っすぐは見せ球ではなく、勝負球。変化球を生かすも殺すも真っすぐ次第です。それをどう使うかだと思いますね」

絶妙のコントロール、そして宝刀のシンカーを武器に青山学院大学から2001年ドラフト自由枠でヤクルトに入団した石川は、1年目から先発ローテーションに入って5年連続で2ケタ勝利を飾った。セ・リーグで入団から5年連続で10勝以上をマークしたのは、堀内恒夫、江夏豊に次ぐ快挙だった。

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