高収入の医師たちがあえて「起業」を選ぶ理由 閉鎖的な医療界と一般社会の溝を埋める

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左から武部氏、小児科医として医療政策に取り組む参議院議員の自見はなこ氏、麻酔医で青木重機運輸社長の青木繁政氏、西澤氏

医学生の目を“外”に向けさせる

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「医学生は大学入学前にキャリアを決める。しかし、キャリアの多くは偶然によって形成されるもの」と語るのは、聖路加国際病院の研修医・西澤俊紀氏だ。医学生時代に企業のインターンシップに参加し、視野を広げた実体験から、閉鎖的な医学部から一歩踏み出すチャンスをつくることが、医学生の多様なキャリア形成につながると実感した。

2016年に医学生を支援する団体を紹介するサイト「ソーシャルキャピタル・ラボ」を立ち上げる。そこで紹介する31の団体は、医師向けの英語勉強会を開催したり、企業でのインターンの斡旋、スタートアップ支援、さらにAED(自動体外式除細動器)設置のロビー活動を行ったりなど、医学生が“外”の世界に目を向ける機会を設けている。

本来、医師の最も重要な目的は人命を救うこと。西澤氏自身、「起業はあくまで手段。本業がおろそかになっては意味がない」と語る。実際にアントレ・ドクターの多くが、臨床医としての活動を継続している。メドピアの石見社長は「医師であることそのものが、信頼にもつながる」と語る。

それでも、外の知見を持ち込むことの重要性を彼らは一様に感じている。石見氏が今年5月に開催したイベント「01 Doctor Initiative」には、起業や新規事業開拓に関心を持つ若手医師や医学部生ら71人が集まり、多様化する医師のキャリアについて意見を交わした。

閉塞的な医療界と一般社会の溝を埋める起業家医師。彼らが両者をつなげる日も、そう遠くなさそうだ。

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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